正直言うと作品ないしあの作者を責めるほど当事者である中学生を苦しめてないか?
犯人の漫画家は倒錯していて弁護のしようもないが、彼が著名な漫画の作者でなく一介のサラリーマンだったならば当然こんな大騒動にはなってない。
すれ違いさまに胸を触られることは確かに嫌だろうが、事件の深刻度で言えば町の駐在所レベルのことだろう。
「最近、車がパンクさせられる。多分近所の嫌がらせに違いない」とか「酔っ払いか何か知らないがいきなりアッパーくらって喧嘩になってる」とか、
件の中学生(とその親御さん)もそのぐらいのことを告発する心持ちだったはずだ。
おそらく娘から痴漢にあったという話を聞いた親御さんが、街に潜む変質者を摘発し移り住んでもらう目的で警察に相談…というケースが相次いで、犯行が発覚したんだろう。
犯人を社会的に抹殺することないし、人気漫画のメディアミックスプロジェクトを頓挫させ大混乱を巻き起こす覚悟なんてさらさらなかっただろうと思う。
ニュースにならない数多のある町の事件同様、犯人からの謝罪と反省の言葉、そして誠意の形としての幾ばくかの示談金を期待しての通報だったのだろう。
それがいつのまにか犯人はまるで強姦殺人犯かのようなバッシングを浴びながら社会から抹殺されようというのである。
レイプ等か絡んだ悪質なセクハラの告発やおぞましい集団強姦事件等と同規模でこの事件が報じられることで、
今回の被害者サイドがそういった性犯罪被害者が被るのと同じ位の好奇の目に晒されているかもしれないという危機感や、
意図せずとも漫画の打ち切りの原因を作ってしまったという戸惑いとストレスの懸念、
そして犯人がここまでの社会制裁を受けてしまった故に、本来ならば被害者が受けられるはずだった賠償がかなりの割合でなくなってしまうのではないかということを心配している。
まず私たち外野がこの事件に差し向ける態度として、事件そのものと、スキャンダルに対するコンプラ的判断として下された漫画の打ち切りを別問題としてわけて考えることだろうと思う。
今回の騒動における損害の大きさをセンセーショナルに煽ることや犯人を感傷的な言葉で詰っていくことなんて、被害者のことを思えば言語道断なのではないか?
それは被害者にとって負担でしかないし、そういった発言をしている人間がそれで被害者に同情しているというならば思い上がりも甚だしい。
マスコミやネットの有象無象も別の角度から彼女らを苦しめていて、顔も知りもしない彼女らの味方を気取るなんて傲慢は迷惑この上ないはずだ。
更に言えば犯人のTwitterの投稿を切り出してそれを異常な感覚の発露だと揶揄したり、共作者の心境を憶測で語り勝手にこの方の意見を代弁していくという行為は、多方面に問題を派生させ悪影響を及ぼしている気がしてならない。
犯罪者は糾弾されるべきだが、この事件をどう捉え扱うのかは私たちの問題であり、
この事件をスキャンダラスに弄んでおいて「我々がこのような態度に出ることも全ては犯人が事件を起こしたことが悪いのだ」と責任転嫁してしまうのは悪辣かつ論理的に破綻してはないだろうか。