2019-08-06

渋谷異世界シュークリームちゃんに遭った話

渋谷という街は不思議な街だ。

学生がいる、若いちゃんちゃんもいる、スーツを着たおっさんおばさんもいる、外国人観光客もいる、人種多種多様

薬局花屋も深夜まで営業している。「薬」も「花」「夜」必要になる街だからこその光景日本中探してもこんな街はなかなかない。

しか名前の通りまさに『谷』。駅に繋がる道は全部上り坂。空を見てもハチ公広場スクランブル交差点だけぽっかり穴が空いたみたいに、まわりは全部高いビル。まさに『谷』。だからこそ色んな人が流れ着く。たぶんここは重力が強く働く場所なんだろう。だからいい人も、悪い人もたくさん集まってくる。

最大の見どころ、スクランブル交差点外国人はたくさん写真を撮っている。テンション高く撮っている、まさに異世界を目の前にしたときの顔。笑顔ポーズ。ふと彼らの持つスマホカメラ画面を覗いてみた。何度も見ている渋谷の街の風景が写っているはずなのに、その画面に映る渋谷の街はどう見ても異世界しか見えなかった。彼らの見えている世界を共有できる、突如として目の前の風景異世界の様に見えてくる。こんなに手軽に異世界旅行をできる街はなかなかない。

 

こんなことを考えながら散歩するのが楽しかったりするのだが、今日は趣向を変えて定点観測をしてみようと思った。やることは単純、ハチ公広場の端っこで立つだけ。誰を待つ訳でもなく、人並みを眺めるだけ。でも誰も、ただ突っ立っているだけの私という人間を気に留めることはない。まるで透明人間になった気分。でもこちからは色んな風景が見える。色んな人が色んな表情で歩いている。特に最近広場フリーハグ流行っているらしい。見ない日はない。あとは500円でケツバット叩きさせてくれる若いちゃん。前から頻繁に見かけていたが、今日はようやく『客』を見た、ナイススイングでした。

こんなことを考えながらただただ突っ立っていたら、黒いスーツ銀髪・銀ヒゲ紳士おっさんと、色黒茶パーマで半袖ワイシャツ+赤ネクタイ白パンスタイルの良い芸能人みたいなおっさん、そしてその推定50過ぎの2人組に囲まれ若い女の子。何やら2人にチヤホヤされている。女の子渋谷によくいるヤンチャ系の女の子とは若干違う、清楚系で可愛い系のシュークリームみたいな20代半ばの女の子。私はただ突っ立ってただけなのだが、銀髪おっさん白パンおっさんシュークリームちゃんこちらに来て、すぐ側で立ち話を始めた。一番自分に近い白パンおっさんは、自分のもう50cm先にいるレベル銀髪白パンシュークリームの3人全員、私の存在には気づいていないみたいだった。まぁ、透明人間から仕方ない。

めちゃくちゃ近いところで喋っているので、話している内容も全部聞こえる。銀髪おっさんシュークリームちゃんに見せているスマホの画面も全部見える。有名政治家とある現職大臣)と銀髪おっさんツーショット、有名モデル銀髪おっさんとのツーショット芸能人とのホームパーティー風の写真。そういう写真を見せながら、銀髪おっさんは「こんなの普通から」と言っている。驚くシュークリームちゃん。そして白パンおっさんシュークリームちゃんに巧妙にボディータッチをしながら「こういう会にシュークリームちゃんも参加できるんだよ!」「シュークリームちゃんもまずはパーティーのお手伝いからでいいからさ!まずは来てみなよ!」「この渋谷スクランブル交差点で15分間立ってたけど、この凄い人数の中ですぐシュークリームちゃんのこと見つけちゃったから!」と言っている。シュークリームちゃんも「いや~~私なんか参加しちゃっていいんですかね~絶対場違いですよ~(ニヤニヤ」。

どう見ても詐欺だわ~~~~~~~無関係の俺から見てもこのシュークリームちゃんカモだわ~~~~~~~そして白パンおっさんは15分ってそんなに大した事ないのに何故言おうと思った~~~~~~~~ようやく白パンおっさんが俺の存在に気づいたけど『ヤベッ』って表情した直後からめっちゃこっち睨むやん~~~~~~~~しかも通りかかってる人も「うわぁこのシュークリームみたいな姉ちゃん詐欺にあってるわぁ」って目で見てるわ~~~~~~~~~。

まぁただ私は突っ立っていただけなので、助ける義理理由も全く無いものの、何とかしてシュークリームちゃんの目を覚ましたくなった。色んなソリューションが頭を駆け巡る。突然知り合いのフリしてシュークリームちゃんに話しかける?いやさすがに不自然すぎる。モノをわざと落としてシュークリームちゃんに話しかける?これも不自然か。ぶっちゃけ義理理由もないのに、銀髪おっさん白パンおっさんの恨みを買う様なことはしたくない。自分の身を守りつつ、姉ちゃんの目を覚ます方法ベストだろう。

ふと見ると、銀髪おっさんはずっとスマホをイジっている。いつまで芸能人との写真見せたがってんねん、と思いつつも、都合よく白パンおっさんこちらに背を向けている。シュークリームちゃん視線こちら側。チャンスだ。白パンおっさんが夢中で喋っている最中スマホの画面にでっかく『詐欺』と表示して、白パンおっさんの肩越しに画面をシュークリームちゃんの方に思いっきり見せてみた。客観的に見ると凄まじい光景なんだろうがやってる本人は全員全力だったので許してほしい。さすがに視線までシュークリームちゃんに向けられなかったのでシュークリームちゃんの反応は分からなかったが、気づいてくれた様な気がしなくもない。でも確証が持てない。だからもう1回やってみた。突然シュークリームちゃんから、今までのカスタードみたいな声色とは違う、まっすぐな声色で、「ちゃんと見えてるよ!」。銀髪おっさん白パンおっさんも私も一瞬理解が追いつかなかった。私だけその言葉真意が分かった様な気がした。でもまだシュークリームちゃんは依然として銀髪おっさん白パンおっさんの話をあしらい続けている。でも話を終わらせようとしている様に思わなくもない。会話はその後もしばらくは続いた。

結局、シュークリームちゃん銀髪おっさん白パンおっさんとまた会う約束をして、一人で渋谷の駅に消えて帰路についた。直後、銀髪おっさん白パンおっさんは次のカモを探していた。

 

 

あのシュークリームちゃんのあの言葉真意は、いつになったら分かるのだろうか。また渋谷に行けば答えが見つかる気がする、また渋谷に行こう。

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