2024-07-30

和食中級者向け 煮物理論

和食煮物というジャンルは、地味な上に難しく、取り立てて食べたいとも思わないようなものなので料理初心者には手を出し辛い分野だ。

しかしかぼちゃの煮物のような惣菜をしっかりと作れるようになると、ちゃん家庭料理を作っている感が高まり生活が丁寧になる、かもしれない。

ここでは自称料理中級者の俺が、同じ中級者の人に向けて煮物のコツを理詰めで解説してみたい。


  • 中級者が目指すものは何か

初心者煮物でやらかす失敗といえば、生煮えとか火力が強くて焦げるといったものだ。それらをクリアした中級者の失敗は、「味が薄い」「うまいけど煮崩れしている」といったものが多い。

中級者が目指すのは、「基本的な味付け」と「煮崩れ防止」のマスターだ。

煮物を美味しくて見栄えもよく作るのは中級者でもなかなか難しく、俺もたまに失敗する。これらを失敗なくこなせるようになれば、中級者の中でもかなり上澄みだ。


ここで煮物基本的な味がどうやって決まるのかを理屈説明したい。

120cc、醤油30cc、みりん30ccを鍋に入れて、10分間煮詰めたとする。すると10分間のうちに水のうち60ccぐらいが蒸発して、

もともと水と醤油みりん12:3:3ぐらいだったのが、煮物が仕上がる頃には6:3:3ぐらいの比率になり、これでちょうどいい煮汁の濃さになる。

これが、煮物の味が決まる理屈だ。(これはあくまで例えであり、実際の蒸発量は知らない。)

煮物が仕上がる頃に煮汁の濃さがちょうどよくなるように、リアルタイムで変動する水分の量をコントロールするのが煮物の肝だ。


  • よくやる失敗

先ほどのレシピで2倍の量の煮物を作る場合煮汁の量も倍にしようとして水240cc、醤油60cc、みりん60ccを入れたくなる。しかしこれが失敗の始まりだ。

なぜなら水分の蒸発量は先ほどと変わらないため、10分間煮詰めるうちに水は60ccしか蒸発せず、10分後の煮汁比率は 9:3:3 ぐらいになるのだ。

先ほどより水の比率が高くなり、こうして薄味の煮物が出来上がる。煮汁の量を多くする場合、水は少なめにするのがポイントだ。


  • 焦って火を強くすると

水が多すぎた場合、焦って火を強くしたり、煮る時間を長くして水の蒸発量を上げたくなるがそうすると今度は煮崩れという別の問題が起きる。煮物バランスは繊細だ。

かぼちゃや魚といった煮崩れしやす具材は、煮詰めることによるリカバリほとんど効かないと思っていい。

どちらかというと、最初は水を少なめにして、後から水を足す方が失敗しにくいかもしれない。


煮物に欠かせない落し蓋には、次のような効果がある。

  1. 蓋の下に熱を閉じ込める
  2. 食材を押さえて煮崩れを防ぐ
  3. 煮汁の対流を促す

このうち最後についてだが、煮物というのは大抵、割と少ない量の煮汁で煮ることが多い。食材の上部まで煮汁に浸からない状態で煮るため、食材の上部には味が染みにくくなる。

そこで落し蓋をすると、下から湧きあがった煮汁が蓋に沿って横方向に流れ、それにより鍋全体で立体的な煮汁の対流が発生し、食材の上部まで満遍なく煮汁が行き届くのだ。

アルミホイルでもいいので、できるだけ落し蓋をするのをお勧めする。


  • 鍋の大きさ

煮物に使う鍋の大きさも重要だ。

大きな鍋を使うと煮汁は薄く広く広がる。面積が広がることで蒸発が早くなり、水位が下がるために鍋全体の対流も起きにくくなる。

基本的に大きな鍋を使ってもいいことはあまりない。

大きな食材を煮たり、筑前煮を大量に作るなら大きな鍋を使う必要があるが、かぼちゃをほんの数切れ煮る程度なら、無駄に大きな鍋は使わないほうがいい。


  • 油は添えるだけ

きんぴらごぼうのような、炒めてから煮る料理では油はごく少量しか使わないほうがいい。

油は水分を弾くため、食材が油まみれになると煮汁ほとんど染み込まなくなるためだ。

ちなみに中華料理では、煮汁に水溶き片栗粉でとろみを付けることで油まみれの食材煮汁物理的に絡ませるという手法を使う。

和食でも同じ手法は使えるので、油を入れすぎた時のリカバリとしては煮汁にとろみを付けるのがいい。

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