2023-09-29

奢る

今でも思い出すことがある

所謂地方Fランと呼ばれる大学であったが、無事に希望学部入学し、そのまま見学の流れでサークルに入った。

サークルの内容は話に関連しないため割愛するが、なかなか雰囲気の良いサークルだったと思う。

男女比は3:7程で女性が多く、メンバーは全員大人しめで、サークル時間外でも部室に置いてある誰かが持ち寄ったカードゲーム遊んだり、その流れでご飯を食べに行ったりしているようだった。

ようだった、というのは自分がその会に参加したことなかったからだ。


サークルでは週に2回ほど活動があり、自分はその活動が終わると一番はじめに部室を後にしていた。

それが何回も続けば、あの子はああいう子なんだと分かってくるだろうし、特に帰宅に関して言及されることは無かった。サークル時間外で遊んだりすることはないが、メンバーとの関係も良好であったし、サークル活動は楽しかった。


ただ一度、自分が1回生の頃に4回生の先輩からご飯に誘われたことがある。

「このあと皆でご飯行くんだけど、𓏸𓏸さんも行かない?奢るよ」

4回生の先輩はサークル代表をしている人だった。(あとから知ったが、普通は3回生代表をするものらしい)

いかにもお人好しという言葉がしっくりくる人物で、同じサークルの一学年下にかわいい彼女がいた。

教職を目指しており、毎日忙しない中でサークルにも顔を出している。凄い人だ。

恐らく、自分のことを気にかけて声をかけてくれたのだろう。

でも、自分の中で「奢る」という言葉が引っかかり、離れなかった。

先輩はバイトしたことがないらしい。

らしい、というのは他の同期がその先輩にどんなバイトをしようか相談しているのに聞き耳を立てていた時に得た情報だった。

そりゃあ、それだけ忙しかったらバイトする時間は無いよな。

でも、何故か「奢る」という部分に許し難いものを感じ、

「先輩、バイトされてないですよね?前に、仕送り生活されてるって、仰ってましたよね?自分、先輩のご両親にご飯、ご馳走になりたくないです。すいません。」

と断ってしまった。


その前後のことはもう記憶が無いが、その受け答えの事実だけハッキリと記憶に残っている。

そうして、こうなんというか、少しナーバスになってしまった日に限って思い出すんだ。

あのとき言葉を押さえ込み素直に奢られていれば良かっただろうか。

そもそもなんであんな、言い方しか出来なかったんだろうか、

生きていればそんな、ん?と思うようなことが沢山あるだろうに、なんであのときだけ、口から出てしまったのだろうか。

なんともいえない、この心地の悪い気持ちだけを、これからもたまに思い出すのだろうな。

  • なんであんなことを…って不思議なことかのように言ってるけど 忙しくしてる先輩を「でも親金だろ」って元々考えてたからでしょ

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