2021-10-24

当時中一だった私が、塾の道程で吹っ掛けられた因縁と、それによって受けた影響について

夜だったはずだ。7時半だったか、ともかくその頃にはもう、すっかり暗くなっていた。そこを自転車で行くのだ。所在は、比較的には都会の方だったから、宵闇はネオン光や、車が放つ種々の光が斑に照らしている。そこを、当時中一だった私(以下、私と呼称する)が、幼稚な自転車で通行するのである。むろん、舐められる。

塾まで、至極単純な道のりで、自宅から、三十分もせず到着する。順路も、ちょっと右左、捻じ曲がった局所を踏破すると、後の二十何分を道なりに、ひたすらに直進するのみだ。国道から、十分も満たない近所だからだろうか。交通の便を良く配された、長い道路の両脇には、BOOKFFPCでない方のマック、小さな銀行……大抵の設備が整っている。つまり、人目だって、十二分にあった。

そこは、少し幅狭な通路だった。少なくとも、まだ自転車道を通行することに、一縷の不安を持っていた私にとっては、その通路は少し手狭で、七面倒な場所であったことに違いない。幾つかの難所を脱した私は、もう二分も立たない内に、目的地にたどり着く手はずとなっていた。もう着くのだ。気だるさと同時に、私の顔はほころんでいる。前から、二人組の男が歩いてくる。

水溜まりボ〇ドみたいな二人だった。違いと言えば、デブの方が金髪だったと言う位である。それ以外は、本当に酷似していた。

私は、車道に幅を寄せた。その時、自動車道を大きく乗り越えトラックが接近していたし、ガードレールもあったので、どのみちそうする他ない。当然、私は二人組が、通りやすいよう、右に固まってくれる事を期待していた。

その期待は砕かれる。そうした類の善意どころか、彼らは私へと悪意すら向けてくる始末だ。具体的には、私の通行を阻む様に立ちふさがると、デブは何を考えたか、「こんばんは」と言う。

怖いと感じた。私は一層横に寄せると、少し、身を縮めた。一瞬、彼らは不気味な沈黙を保ったと思うと、私の右をぬるりと通過してゆく。デブは再度、「こんばんは」と言った。先程より大きい。彼の声は、記憶に定かではないけれども、高い声をしていたはずだ。その高い声が張り上げられるのだ。再度、「こんばんは」と言った。ほぼ怒鳴る様だった。男の身も蓋も無い叫び声は、あなたも聞き覚えがあるのではないか。私はそれに強い不安を覚える。恐怖ではない。しかし、どうも、身の安全が脅かされる様な気がしてならなくなるのだ。

その瞬間もそれだった。恐怖はなく、不安けが総体を循環するのだ。不愉快感覚だった。横のガリが笑う。何故か笑う。彼らは、人を脅かすことに悦びを見出しているに違いない。双方とも笑うその声は、喜悦と興奮に歪んでいた。

彼らは通り過ぎてゆく。距離の壁が初めて私に事態の終息を確信させた。気付けば私は塾内に入っていた。授業はするすると脳に染みわたるようだ。私は、その日から少し、見た目に気を遣うようになった。あの日買った競技自転車は今は錆びつき、備え付けの駐輪場放置され、今も風雨に打たれている。

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