寝る間も惜しんで物語を書いていたのに、彼氏ができた途端に創作意欲が消えてしまった。
そのまま結婚して子供が産まれた今、何かを書きたいと思うのにさっぱり意欲がわかない。
数年前はあんなに連続更新していた小説サイトも停止中。年に一度、友達の誕生日にSSを書くときぐらいしか更新しない。
夜中、何かに取り憑かれたようにキーボードを叩くときは登場人物の中の誰かに完全に憑依している。
わーっと盛り上がった感情が萎えないうちに全て書き切ってしまいたい。
途中でやめてしまうと翌日には続きが書けなくなってしまう。そういう焦りから、キーボードを打つ手が止まらなくなる。
深夜に書き上げてサイトにUPするのが何よりも楽しかった。わくわくした。
書き上げた達成感があるから、翌朝会社に行くのも辛くない。妙にハイテンションのまま出勤して仕事をする。
帰宅後はぐったりして寝てしまうんだけど、それがまた心地よい。
家族が寝静まる中、無音のキッチンでキーボードを叩く音だけが響き続ける光景って、客観的に考えるとヤバいやつだ。
母とソリが合わなくて家を飛び出した後、一人暮らしのワンルームのアパートでもキーボードは鳴り続けた。
とにかく淋しかったのだ。
帰宅したらすぐにPCをつけて物語を書いた。サイトの訪問者さんが読んで楽しんでくれてるのを見て、やっと人と繋がれているような実感が持てた。
寝室で主人や子どもの寝息が安らかに響く今、必死で物語を描く必要性がなくなってしまったように思える。
誰かとの繋がりを求めてキーボードを叩いていた夜が、ふと、懐かしくなることはあるけれど、決してあの頃に戻りたいとは思わない。
人との繋がりに飢えて「渇望する」ぐらいのレベルじゃないと、わざわざ物語を書くなんて面倒くさいことができないのだ。
気の抜けた風船みたいに楽に息ができる今だけど、私、このままでいいのかなあ? と思ったりもする。
「繊細さんの幸せリスト」っていう本の「創作が止まったあなたへ」っていう章がまさに今の私に当てはまるんだけど、また物語を書ける日は来るんだろうか。