義父が義祖母の入院先へと向かっている最中に、義父はZoomのルームを作成し、その招待リンクを私達に送ってきた。
友達や知り合いとの通話はディスコやLINEで事足りていたし、会社ではビデオ会議のビの字もなかったから、私達にとってこれがはじめてのZoom体験だ。
設定を適当に済ませて招待リンクを踏むと、既に親戚一同集まっていた。
ビデオ通話はいつも1人1枠(?)で見慣れていたので、一家全員が勢揃いしている枠がいくつもある画面を見るのはなんだか変な感じだった。義父はまだ病院に着いていないようで、先に集まった人たちで少し雑談なんかをしていた。
しばらく経った頃、一定の感覚でピーピー鳴る、あの医療機械的な音が聴こえてきた。
義父の画面枠には、顰めっ面にも見えるような表情で目を瞑り、ベッドに横たわる義祖母の姿が映っている。
Zoom上で集まった親族が、順番に義祖母に声をかけていくことになった。のだが。
同じ病室に、先程亡くなられた方の家族がいるらしく、その家族の泣き声がものすごい声量で聞こえてくる。病室に声が反響しているのがZoom越しでもわかる。
親族の声かけと見知らぬ家族の泣き声が混ざってこちらに聞こえてくるもんだから、親族が義祖母に何と言っているのかあまり聞き取れなかった。私が聞こえなくても義祖母に聴こえていたらいいんだけれど。
向こうの泣き声にかき消されないよう、できるだけ声を張って喋ろう、と思いながら私達は順番が来るのを待っていた。
突然、通話が途切れた。
急いでwifiを確認して、Zoomを震える手で再起動した。冷や汗と動悸が止まらなかった。
混乱した頭で色々触って、ようやく繋がった時には義祖母は息を引き取った後だった。
Zoomの無料版は人数が多いと通話に時間制限がかかり、強制切断されるらしい。Zoomがそんな仕様だったなんて知らなかったし、それならskypeとか他のソフト使った方がよかったんじゃないの?と思った。言わなかったけれど。
亡くなった義祖母に今度こそお別れの言葉をかけて、Zoom看取りは終了……しなかった。
火葬後の墓はどうするだの、住んでいた家はどうするだのの話を義父達がはじめてしまい、親戚は抜けるに抜けられず、口出しもしづらい雰囲気の通話が続行された。
時間制限で2回通話が強制切断されたあとも義父達は会話を続けていたので、3回目の切断時に私達は通話を抜けた。