2021-01-06

ナスを殺す

卒業論文の提出が近づいてきた緊張からか、最近はなかなか眠れていない。眠れないと、お腹が空く。

深夜に重いものを食べるのは身体に良くないと聞くので、こういう時には味噌汁を飲むようにしている。

フリーズドライナス味噌汁にお湯を注いでいると、ふと、中学時代同級生に言われたことを思い出した。

「おい、ナスが何か切ってるぞ」

調理実習の時の台詞だ。

もちろん、ナスとは私のことである

中学時代、私はクラスで浮いていて、

陰口を言われたり、私が触ったものを○○菌が付いた、みたいなことを言われたり、

漫画で読むようなものよりは軽いけれど、いじめのようなものを受けていた気がする。

そんな状況だから普通な楽しいはずの調理実習だけれど、

自分食材を触るのは良くないんだろうな、と

いじめられっ子ながら思っていた。

しかし、何もしなければ家庭科評価が落ちてしまうので、確かカニカマを切っていた。

この台詞は、その時に言われたことだ。

ナスに似ている、というのは馬鹿にされたことだとわかった。今なら、鏡見て出直したら?くらい言えるのかもしれないけれど、当時はそれはとてもショックで、同時にナスも嫌いになった。今でも自分容姿コンプレックスだ。

私のナス嫌いが治ったのは、大学に入ってからだ。

大学3年生になった時、キャンパスの変更に伴い、引っ越しをした。

そして、たまたま同じ専攻の学生と同じマンション引っ越した。

彼女自分とは逆の、クラスの中心にいるような人で、最初はどう付き合っていけばいいのかわからなかった。

しかし、私の部屋に黒い奴が出て、彼女に退治してもらってから急激に仲が良くなり、今では二日に一度は会うほどの仲である

彼女は、良く私のことを褒めた。

真面目だということだったり、容姿であったり、とにかく色々なことを褒めてくれた。

卑屈な私は、それをお世辞だと思っていたけれど、自分の良いと思ったものを、憚らず良いと言う彼女と接していくうちに、

だんだんと私のコンプレックスも薄くなっていった。

そんな彼女は、野菜が好きで、特にナスが好きだった。

夕飯を作ったから食べに来て、と誘われ、

出されたスープナスが入っていたことを覚えている。

他人に出された食事からと、無理をして食べたそのナスはとてもおいしくて、私はその時、ナスの味ではなくて、自分が嫌いなんだな、と気がついたのだ。

今でも、自分いじめた奴らの名前は覚えているし、相談しても見て見ぬふりをした担任名前も覚えている。

化粧を覚えても、服に興味を持っても、心のどこかでは、でも私はナスに似ている、というそ一言邪魔をする。

それでも、楽しかった高校時代大学時代

そこで私と仲良くしてくれた人達、そして、ナスを好きな、彼女がいて、少しずつ私は前に進めている。

彼女調理するナスは、過去の私でもある。

私が嫌いな過去の私を、彼女の温かな言葉が丁寧に切って、殺していく。

  • ナスビは純粋に食感が嫌いで人生の中で10回も食べてない あと玉ねぎと太いネギとこんにゃくも許してない ピーマンは30超えたあたりからなぜか大嫌いから大好きになった

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