近頃、アニメを見なくなった。
深夜アニメに熱中していた当時、中学生の頃はよくオタク仲間たちとアニメを語りあった。
休み時間を迎えると空き教室に集まって昨晩のアニメの話題で盛り上がり、放課後が訪れるとオタクグッズ
を物色するためにアニメショップに足を運んだりもしていた。
翌年にはアニメ好きの部活の後輩とも親しくなり、オタクの輪は次第に広がっていった。
しかし、高校進学を機に彼らとはそれっきり会うことはなかった。
以降、アニメを見る機会は徐々に減少していった。
もしかすると自分にとってアニメとはただのコミュニケーションツールであって、趣味と呼べるものではなかったのかもしれない。
人間関係で頭を悩ませていた高校生の頃、自分の心の拠り所となっていた。
赤の他人である声優を愛称で呼び、リスナーであるオタクたちは「○○ネーム」といって同じ名前を名乗り共通項を得ていた。
そんなふわふわした関係に喜びを見出して、コミュニティに属していた気分になっていた。
彼女のためと思い、ファンクラブに入会してイベントに足を運ぶことも少なくはなかった。
今振り返ると、なんて滑稽だろうと笑いを通り越して悲しみと陰鬱な気持ちが自分を襲う。
近頃、女性への興味を失った。
何者にもなれずオタクであるというくだらないアイデンティも失った自分は空虚な日々を過ごしていた。
ある日、そんな自分を街中ですれ違う女性があざ笑っているかなような妄想に陥ってしまった。
ひとたび女性を前にすると、自分が矮小な存在に感じてとにかく女性が怖くなった。
近頃、生きる気力を失った。
中には著名な芸能人までもが名前を連ねており、心底驚愕している。
そんな暗いニュースを耳にするたび、厭世的な気持ちが増していって自分までも人生を諦めたくなってしまう。
こんなことで頭を悩まして、今夜も眠りにつけないであろう。