ここのところは全く人間を見ない。妻に聞くと、どうやら夜も
今まで以上に少ないらしい。いったいどうしたのだろう。
息子も特に何も知らないようだ。何もしていないといっている。
あれ、でも珍しく、オスとメスの人間とやらが道を歩いている。
何やら大きな荷物を持って、眼下の海に向かっているようだ。
時々大笑いしたり、相手をたたいたりしている。悪い雰囲気ではないらしい。
今年も張り切って燃えているというのに、あまり意に介していないようだ。
どれ、もっともっと燃えようか?と思っていたら、風の精が止めろと言ってきた。
ここのところ人間があまり来ないからどうしたのだろうと思っていたが、
今日は久しぶりに人間が来た。オスとメスのようで、笑いあいながら
こちらへ向かってくる。結構な大荷物だ。いったい何を持っているのだろう。
と思っていたら、カバンから何やら棒を取り出してこちらに刺してきた。
まぁ痛くもかゆくもないのだが、驚いただけだ。棒を刺して何やら広げ、
その広げた下によくわからない四角いものを置いている。そこからはまた
4本の足が出ていて、上に人間が乗るたびにじわじわと沈んでくる。
本当は永遠に沈めてもいいのだけど、そこそこのところでとどめておいてやろう。
どれ、兄弟にも教えてやろうか。久しぶりだから喜ぶぞ、きっと。
まだこちらからは見えないが、どうやら人間が久しぶりに来たようだ。
兄弟がそう教えてくれた、というか状況を逐一実況している。
今はどうやら身につけている布をはいで、体を最低限の小さな布だけで
覆い直しているようだ。肌を見せているらしい。
何も身にまとわず、素肌のままの状態でこちらに来ていたものだ。
隠していたにもかかわらず、なぜ今はまた肌を出すのだろうか。
まぁよい、私には関係のないことだ。
お母さんが言うには、どうやらまたあの2足歩行の連中が来たようです。
ここのところ見ないので、すっかり平和になってよかったと思うのですが、
遊んでいるとか。こちらに害がないなら何でもいいんですが。
どうせ向こうにいるから関係ないって?ダメだよ、やつらはすぐあの
2本の腕でこっちを捕まえてくるんだから。逃げ場のない、叔父さんの
作っているらしいじゃないか。実際にはそんなこと出来た試しないのに。
僕はこのオスに買われたんですが、ようやく出番の様ですね。
買ってからはや2年、このオスが呼んだメスが姿を見せてから1年ですか。
長かったですね。ようやく僕を水場にもっていってくれるようです。
僕と一緒に買われましたから、1年間寝て過ごしたわけですよ。
やっと活躍の場ができてよかったです。
あぁでも、僕はメスが使うんですね。わかりました、いいでしょう。
どうもこんにちは、お元気ですか。あなたはついこの間このメスに
買われたんですか?よかったですね、すぐ活躍する機会があって。
気に入ってるんじゃないですか?よかったですね。
あぁ僕ですか、僕は1年ほど眠っていて、やっと今日
あら、夫が言っていた人間たち、まだここにいたんですね。
もう夜も遅いというのに、早く帰らないのかしら。
何か布を巻いているのね。もっといつもみたいに、
全身を隠す布で覆っちゃえばいいと思うんだけど。
まぁ何かしら事情があるんでしょうね。
2人とも疲れているみたいですけど、そんなに楽しかったのかしら。
後で夫や息子に聞いてみましょう。
あら、どうしたのかしら、押し黙っちゃって。気になるわ。
何、今は私が邪魔ですって?風さんは何をしているのかしら。
さぁどいてちょうだい。ありがとう。
あらあら、男の人の方は私を褒めてくださるわけ?嬉しいわ。
あれ、でも女の子は顔を真っ赤にしちゃって、どうしたのかしら。