2020-07-30

ここのところは全く人間を見ない。妻に聞くと、どうやら夜も

今まで以上に少ないらしい。いったいどうしたのだろう。

息子も特に何も知らないようだ。何もしていないといっている。

あれ、でも珍しく、オスとメスの人間とやらが道を歩いている。

何やら大きな荷物を持って、眼下の海に向かっているようだ。

時々大笑いしたり、相手をたたいたりしている。悪い雰囲気ではないらしい。

今年も張り切って燃えているというのに、あまり意に介していないようだ。

どれ、もっともっと燃えようか?と思っていたら、風の精が止めろと言ってきた。

まぁ面倒だからいか。もう少し見ていよう。


ここのところ人間があまり来ないからどうしたのだろうと思っていたが、

今日は久しぶりに人間が来た。オスとメスのようで、笑いあいながら

こちらへ向かってくる。結構な大荷物だ。いったい何を持っているのだろう。

と思っていたら、カバンから何やら棒を取り出してこちらに刺してきた。

まぁ痛くもかゆくもないのだが、驚いただけだ。棒を刺して何やら広げ、

その広げた下によくわからない四角いものを置いている。そこからはまた

4本の足が出ていて、上に人間が乗るたびにじわじわと沈んでくる。

本当は永遠に沈めてもいいのだけど、そこそこのところでとどめておいてやろう。

どれ、兄弟にも教えてやろうか。久しぶりだから喜ぶぞ、きっと。


まだこちからは見えないが、どうやら人間が久しぶりに来たようだ。

兄弟がそう教えてくれた、というか状況を逐一実況している。

今はどうやら身につけている布をはいで、体を最低限の小さな布だけで

覆い直しているようだ。肌を見せているらしい。

今よりも気の遠くなるほどの昔は、人間などという動物

何も身にまとわず、素肌のままの状態こちらに来ていたものだ。

人間も変わったのだな。しかし、一時期は肌をできる限り

隠していたにもかかわらず、なぜ今はまた肌を出すのだろうか。

先祖返りか?それとも本能を取り戻したか?滅亡に近づいたか

まぁよい、私には関係のないことだ。


お母さんが言うには、どうやらまたあの2足歩行の連中が来たようです。

ここのところ見ないので、すっかり平和になってよかったと思うのですが、

やはりあいつらはこちらに来るのですね。

あぁ、でもこちらまでは来ないようで、もっと叔父さんの近くで

遊んでいるとか。こちらに害がないなら何でもいいんですが。

ダメだよ僕、あいつらは危ないよ。近づいちゃダメだ。え?

どうせ向こうにいるか関係ないって?ダメだよ、やつらはすぐあの

2本の腕でこっちを捕まえてくるんだから。逃げ場のない、叔父さんの

いる方向に自分から近づくなんて、正気の沙汰じゃない。

第一祖父さん曰く、やつら捕まえた僕らが逃げる映像まで

作っているらしいじゃないか。実際にはそんなこと出来た試しないのに。

危ないかダメだよ。見るなら僕と一緒にここから見よう。


僕はこのオスに買われたんですが、ようやく出番の様ですね。

買ってからはや2年、このオスが呼んだメスが姿を見せてから1年ですか。

長かったですね。ようやく僕を水場にもっていってくれるようです。

さっき友達に着替えていましたね、彼らも嬉しそうです。友達

僕と一緒に買われましたから、1年間寝て過ごしたわけですよ。

やっと活躍の場ができてよかったです。

あぁでも、僕はメスが使うんですね。わかりました、いいでしょう。

何なら持ち主より軽そうだから安心してくださいね。

どうもこんにちは、お元気ですか。あなたはついこの間このメスに

買われたんですか?よかったですね、すぐ活躍する機会があって。

そうなんですか、あなたの持ち主は何か調子よく音を出しながら

あなたを選んだんですか。じゃあどうやら、心からあなた

気に入ってるんじゃないですか?よかったですね。

あぁ僕ですか、僕は1年ほど眠っていて、やっと今日

日の目を見たんです。あなた出会えたのも何かの縁、

よろしくお願いしますね。




あら、夫が言っていた人間たち、まだここにいたんですね。

もう夜も遅いというのに、早く帰らないのかしら。

あんなに肌も出して、と思ったけど、さすがに寒いのか

何か布を巻いているのね。もっといつもみたいに、

全身を隠す布で覆っちゃえばいいと思うんだけど。

まぁ何かしら事情があるんでしょうね。

2人とも疲れているみたいですけど、そんなに楽しかったのかしら。

後で夫や息子に聞いてみましょう。

あら、どうしたのかしら、押し黙っちゃって。気になるわ。

ちょっとあなたどいてくださる?見えないじゃないの。

何、今は私が邪魔ですって?風さんは何をしているのかしら。

逆でしょ、こういうときこそ私が必要なんですよ。

さぁどいてちょうだい。ありがとう

あらあら、男の人の方は私を褒めてくださるわけ?嬉しいわ。

あれ、でも女の子は顔を真っ赤にしちゃって、どうしたのかしら。

まぁいいわ、気分もいいし、頑張っちゃおうかしらね

どうかこの人間たちに幸せが多からんことを。

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