8人ほどのグループで、全員が高さ1メートルほどもある巨大なリュックを携えている。
メガネ率80%、いかにも高校生らしいあばた顔で、モテそう奴は一人もいない。
そちらの方から、颯爽とやってきて男子部員たちの横、私の正面にドカッと座った新たな部員。
無骨な登山靴と泥で汚れたトレッキングパンツをガッと開き、股の間に1メートルの巨大リュックを挟む。
上半身を見て目を疑った。
シンプルに後ろで縛り、残りを両サイドに垂らした長い髪。
顔は・・・美少女である。ノーメイクだし、芸能人レベルというわけではもちろんないが、
無骨な出で立ちとの落差で清楚な顔立ちがより際立って見える。
紅一点、間違いなく部員の全員が好きになっているであろうレベルの美少女である。
少女は隣にいる冴えないメガネと二言三言世間話をかわしたのち、即睡眠体勢に入った。
間違いなく男子部員たちは色めきだっているに違いないと思って自分と同じ列の数人の様子を見回すと、
・・・そいつらも寝ている。わかってない。こいつら今後一生手に入れられないであろう
黄金の青春期の真っ只中にいるということに少しも気づいてない。
その時事件が起こった。
その時である。
ゆったりしたシャツの首元が垂れ下がり、それまで黒い布に隠されていた二つの膨らみが、
膨らみを支える白いブラジャーまでもが、正面に陣取る私、そして4人の男子部員(端っこの一人は位置的に見えないか)
だけに見える角度で、目の前にあらわになったのである。
僥倖。
輝かしい青春の一場面に出会えただけでなく、その甘酸っぱいエロスの、ひょっとしたら
最も輝いた一瞬に居合わせることができた。
少女が再び寝入ったのを確認してから、同じ幸せを分かち合った同志たちの様子を伺ってみると、
・・・全員寝ている。
アホかと。今後向こう半年間、事によると一生使えるおかずになるかもしれない思い出を見逃すとは。
心底呆れ果て、目的地に到着したので彼らを置いて電車を後にした。
ふと振り向くと、熟睡体勢に入った少女の傾いた頭が、今にも隣の冴えないメガネの肩にもたれる直前になっているではないか!
私にわかった。メガネは寝たふりこそしているが、少女の頭の重みを肩で感じる瞬間を今か今かと待ち構えているってことが。
心の中でメガネにサムズアップを送り、私は改札を後にした。
よりもいのキモさってのはこれと同じ
おれはわかるぞ、同士