たぶん、あの時のことを覚えているのはアラフォー以上の世代なのだろうが、
昭和天皇がなくなる前の数ヶ月間の雰囲気は、今思えば異様だった。
たしか、9月ごろに一旦かなり危ない状態になってから、数ヶ月持ちこたえられたせいもあって、
自粛によってさまざまな行事が中止になったり、テレビ番組が差し替えになったり、CMで「おげんきですか~?」と叫ぶ井上陽水の映像が口パクになったり、
実にいろんなことがあった。
「天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。」
という一説に、ピンと来ない人もいるようだが、
もし、昭和の最後と同じようなことが行われるとしたら、確実に影響はでる。
個人的によく覚えているのは、あの数ヶ月間、天皇のご病状と称して、
毎日、テレビで、体温、脈拍、血圧などの数値が報道されていたことだ。
しかも、吐血や下血があったとかなかったとか、その量がどうだったのか、なんてことも逐一報じられていた。
「下血」「喀血」「吐血」という言葉の正確な意味や使い分けをを知ったのは、あの時だった。
「毎日、ケツから血が出たのでないのって報道されるなんて、天皇ってほんと大変だな」と思ったものである。
なにしろ天皇陛下のご容態は全国民が固唾を飲んで見守っているという建前の下、そんなことが行われていたのだが、
今考えれば、死を迎えようとしている老人に対する、ずいぶんな人権侵害だったと思う。
もちろん、今回の「お気持ち」の内容は、象徴天皇のあり方とか、国民と皇室の関係とか、いろいろと考え抜かれた上でのものだと思うが、
やはり、あのときの記憶が、今上天皇のお気持ちの中にあったのではないかと、推察する。
まだ27年しか働いてないから人間にはなれません。定年まであと13年ぐらいか。