V系という括りで言えばソフビ系に当てはまるそのバンドは、音楽性も人間性もとても魅力的で。
田舎の中学生だった私は、全国ツアーの中でも地元の1公演にしか行けなかった。
だけど、とても満足していたし、楽しくて仕方がなかった。
でも大学受験の頃にはそのバンドも新たなプロデューサーを迎えたり、少しずつ方向性が変わっていってしまって。
もういいか、とライブには行かなくなった。
大学生になってから、時折CDショップに行って彼らのCDの棚を見て、新しいアルバムが出ていたら一応買っておくことは忘れなかった。
久しぶりにカラオケで彼らの曲を歌ったら昔のPVが流れて懐かしくなった。
同じバンドが好きだと言っていた、別ジャンルで繋がった友人にその話をしたら、友達もその話を聞いてPVを見て懐かしくなったらしい。
バンドの話で盛り上がり、調べてみたらちょうどツアーが始まることを知った。
10年ぶりに見た彼らは、ステージの上でキラキラに輝いていて、色あせるどころかもっと素晴らしくなっていた。
今回のツアーはそれぞれチケット1箇所しか取れなかったけど、次はもっと行こうね、と友達と約束した。
そのためにFCにも入り直した。
毎日CDを聞いて、DVDを見て、ニコ生を見て、楽しくて仕方がなかった。
新しいアルバムをひっさげた、次のツアーの告知があった時、諸手を上げて喜んだ。
ありがたいことに、公演は全て土日2デイズで社会人でも行きやすくて全国各地のチケットを確保した。
最終公演は彼らの思い出の会場だった。そこに行けることが、嬉しくて仕方がなかった。
友達と二人で、本当に楽しみにしていた。
最終公演で、友達は泣いていた。私は、泣かなかった。
メンバーはそれぞれ個別に活動を初めて、私と友達はそれを追いかけるようになった。
いろんなバンドを好きになった友達はすごく楽しそうだった。毎回色んな場所に誘われた。
でも、普通の会社勤めをしていると平日の地方遠征は出来ない。ごめん、と断ることが増えた。
私よりもずっと仲の良い人たちとたくさんの話をしていた。
私とは喧嘩しかしなくなった。夜通し喧嘩したあと、もうダメだ、と諦めた。
友達にはずっと嘘をついていた。
この人好き、って言ってたメンバーも、間近で見た時に醜い二重あごが目立っていた瞬間に熱が冷めた。
本当は、最初に好きになったバンド以外、好きになれたものなんて、一つもなかった。
ただ、ジャンルの切れ目が縁の切れ目、となるのが嫌でしがみついていただけの