2016-01-12

さよならバンギャちゃん

中学生の時、とあるバンドにハマった。

V系という括りで言えばソフビ系に当てはまるそのバンドは、音楽性も人間性もとても魅力的で。

田舎中学生だった私は、全国ツアーの中でも地元の1公演にしか行けなかった。

だけど、とても満足していたし、楽しくて仕方がなかった。

中学高校の6年間はずっとそのバンドと一緒だった。

でも大学受験の頃にはそのバンドも新たなプロデューサーを迎えたり、少しずつ方向性が変わっていってしまって。

もういいか、とライブには行かなくなった。

大学生になってから、時折CDショップに行って彼らのCDの棚を見て、新しいアルバムが出ていたら一応買っておくことは忘れなかった。

社会人になり、お金に余裕が出てきた頃。

久しぶりにカラオケで彼らの曲を歌ったら昔のPVが流れて懐かしくなった。

同じバンドが好きだと言っていた、別ジャンルで繋がった友人にその話をしたら、友達もその話を聞いてPVを見て懐かしくなったらしい。

バンドの話で盛り上がり、調べてみたらちょうどツアーが始まることを知った。

私も彼女も急いでチケットを買ってライブを見に行った。

10年ぶりに見た彼らは、ステージの上でキラキラに輝いていて、色あせるどころかもっと素晴らしくなっていた。

もっと見たい。もっと、彼らの姿を見たいと思うようになった。

今回のツアーはそれぞれチケット1箇所しか取れなかったけど、次はもっと行こうね、と友達約束した。

そのためにFCにも入り直した。

毎日CDを聞いて、DVDを見て、ニコ生を見て、楽しくて仕方がなかった。

新しいアルバムをひっさげた、次のツアーの告知があった時、諸手を上げて喜んだ。

ありがたいことに、公演は全て土日2デイズで社会人でも行きやすくて全国各地のチケットを確保した。

最終公演は彼らの思い出の会場だった。そこに行けることが、嬉しくて仕方がなかった。

友達と二人で、本当に楽しみにしていた。

でも、そのツアー最後に、彼らは活動を止めた。

最終公演で、友達は泣いていた。私は、泣かなかった。

メンバーはそれぞれ個別活動を初めて、私と友達はそれを追いかけるようになった。

友達は、とあるメンバーバンドに急激にハマった。

私もそれを追いかけてそのバンドライブに通うようになった。

そこから繋がって、色んなバンドに手を伸ばした。

いろんなバンドを好きになった友達はすごく楽しそうだった。毎回色んな場所に誘われた。

でも、普通会社勤めをしていると平日の地方遠征は出来ない。ごめん、と断ることが増えた。

友達にはバンギャ仲間がいっぱい出来た。

私よりもずっと仲の良い人たちとたくさんの話をしていた。

私とは喧嘩しかしなくなった。夜通し喧嘩したあと、もうダメだ、と諦めた。

友達にはずっと嘘をついていた。

本当は、新しいバンドになんて全く、一ミリも、興味なかった。

この人好き、って言ってたメンバーも、間近で見た時に醜い二重あごが目立っていた瞬間に熱が冷めた。

本当は、最初に好きになったバンド以外、好きになれたものなんて、一つもなかった。

ただ、ジャンルの切れ目が縁の切れ目、となるのが嫌でしがみついていただけの

金と時間精神を浪費した2年間だった。

ただ一つだけ、最後の別れを告げるとき友達約束したことがある。

「あのバンド活動再開したら、二人でまたライブ行こう」

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