2015-10-12

神経内科専門医が語る認知症

なんだか認知症神経内科が診る時代になって、色々相談されることも多いので一言

やっぱり認知症になるのはみんな怖い。僕だって怖い。

特に、昔は当たり前に街にいた(であろう)痴呆老人が何時の間にか消えてしまった。

どこに行ったかと思うと、身近な家族がいきなり(田舎でほっておいたらいきなりに見える)認知症になったりしてさんざん後始末に苦労して、何とか形にして、ふと明日は我が身なんて思ったりする。

で、実際に施設なんかに行ってみると街から隔離された痴呆老人の山を目にしたりする。

そうじゃなくてもテレビ雑誌新聞など高齢者向けのメディアには不安をかきたてる記事が山のように載っている現状、ふとしたきっかけで認知症に対する恐怖を覚えて、どうにかそうならないようにしたいと思うのはしょうがないことだと思う。

でも、ここに落とし穴があるように思えてならない。

一番こういった人にすんなりと受け入れてもらえるのは「これさえ飲んでたら大丈夫ですよ」「これさえ食べてたらならないですよ」という単純な論法だって楽だし、安心するし信じさえすれば認知症になるまで平穏な日々が続いていく。

ただし厳密にいうとそんな夢の薬なんて存在しない。認知症特に一番患者の多いアルツハイマー病)に対しては全世界のそれこそびっくりするぐらい賢い人々がしのぎを削ってその治療法を探しているが、効果が認められているのは対症療法に過ぎないいくつかの薬だけである。これでも認知症に対してここ数十年でいろんなことがわかってきたしこれからも少しづつは発展していくとは思うが、実用化なんて今心配している人が100歳すぎてからやっとできるかもしれないといったようなレベルしかない。

この不安を利用してキノコだの漢方だの売りつける輩が後を絶たないのが現状一番の問題だと思う。もちろん、それを食べることで認知症になってしまうまで安心して生活できるのはとてもいいことなので全く否定してしまうつもりはないが、それが生活の質を下げてしまうまで高価だったりするとまったく本末転倒状態になってしまう。(そして、往々にしてそういうキノコたちはとっても高い)

もちろんそういったキノコたちがとんでもない効果を発揮することなんて人によってはあるかもしれない。でも、認知症心配するあまりに少ない可能性にかけて高いお金を払って、夕食の質が落ちるなんてばからしいと思うし、運動とか気軽に安価でできる対策を好きなだけやって貰って、いつかなるかもしれない認知症に対してあんまり肩ひじ張らずに生活していくのがいいんじゃないかなーと思うのである

  • 最近はアルツハイマーならアルミが原因とかそんな話もでてなかったっけ。 原因は分かっても劇的な治療法はないってことなの?

  • 糖尿病とか高血圧とかアルミニウムとかいろんな原因が言われているからこそ 一つ片付けたら大丈夫ってわけじゃない多因子疾患だと思うし、単純明快な特効薬はしばらくはでないんじ...

    • なるほどなー。 でも、それ顔出して言えなくて肩身せまそうだなー。 肩肘はらずに好きなもの喰って生きてきたのが糖尿病とか高血圧だもんなあ

    • 認知症が心配でやってきたお年寄りにダイエットしなさいとか食べすぎですなんて言うと二度と来てくれませんからねー。 うまく付き合って家族やら地域につなげるのが一番大事な仕事...

    • 認知症が心配でやってきたお年寄りにダイエットしなさいとか食べすぎですなんて言うと二度と来てくれませんからねー。 うまく付き合って家族やら地域につなげるのが一番大事な仕事...

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