2015-09-13

遺伝子抗うのは不可能なのだろうか

私が高校生とき

父親の度重なる浮気が原因で両親が離婚した。

それ以前にも危機は何度も訪れていて、初めは私も泣きじゃくっていたけれど、

しまいには「早く離婚すればいいのに」と思うようになっていた。

つまるところ父親は、離婚危機が訪れようと、子どもに泣かれようと、妻に愛想を尽かされようと、

浮気をやめることができなかったのだ。

父親は仕事のよくできる人で、子供たちにも優しかった。だからそれなりに好きだったのだけれど、

その件以降、純粋に育ててくれたことを感謝できないでいる。

同じ女だからというのもあるかもしれないが、私は完全に母親寄りだった。

家の中の死角になるような場所で縮こまって泣いている母親を何度も見て、悔しさとも憐れみともつかない感情を抱いていた。

欲望に負け、信じている人を裏切るという最も下劣行為を繰り返す父を憎みさえしていた。

そして、母親を憐れむのと同時に、私はこんなことをする男とは一緒になるまい、と固く決意したのである

★★★

時は流れ、そういったゴタゴタによる傷も大分癒えてきた、と感じるようになった。

そんな今、

私は恋をしている。たぶん今までで一番、溺れてしまっている。

相手はかなり年上のエリートサラリーマン

頭が切れて、自分絶対の自信を持っていて、何より人生を全力で楽しんでいる人。

自分にないものをたくさん持っているその人を好きになるのに、時間はかからなかった。

最初師弟関係のような感じで、仕事の悩みを聞いてもらったり、仕事に関することを教えてもらうだけだった。

しかし、親しさが増すにつれ、私の気持ちがあちらに伝わってしまったのだろうか、

あれよあれよという間に、「そういうこと」をする仲になってしまった。

はいえ愛の言葉を囁かれたりするわけではなく、これは都合のいい女ってやつなのだろうか、と不安に思いながらも、

彼に抱きしめてもらえる幸せの方が大きくて、そのままズルズルと関係を続けてしまった。

ある日、隣で寝ている私に向かって、彼は爆弾を放った。

「俺が●●と結婚しても、この関係続けてくれる?」

●●とは、彼が私とそういう関係になる前に分かれていたはずの彼女名前だ。

私は混乱しながらも彼を問い詰め、衝撃の事実が発覚した。

本命の●●とはまだ続いていて、結婚間近だということ。

さらに、私の他にも定期的に会ってそういうことをする女が3人ほどいるということ。

彼は、わかってると思ってた、と言った。

そりゃ、何となく私はキープなんだろうと思ってはいたけど。

まさか本命がいて。さらに私は何番目かの女だったなんて。

信じられなかった。

さらに信じがたいことに、私は今も、その男との関係をやめられないでいる。

かつて私をさんざん苦しめた「浮気」の片棒を担いでいる、と分かっていながらも。

私は、憎かった父親と同じ過ちを犯しているのだ、と感じていながらも。

私は彼が、どうしようもないくらいに好きなのだ。誰よりも。だから仕方ない、そう自分言い訳をして。

人間は欲望の前には無力だ。つくづく、そう感じる。

そしてきっと私の遺伝子には、特に強く、

欲望に負け、過ちを繰り返す、そんな特性が刻み込まれているのだろう。

この状態を抜け出したいとは思っている、けれど、

どうにもならないことってあるんだよ、と

あの日の私に向かって手を合わせている、そんな今。

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