2021-12-29

やっと読み終えた(非)BL

『白昼堂々』(長野まゆみ

 昭和ジャパン耽美系。BLでないのは、BLレーベル作品ではないから。

あらすじ

 原岡凜一(はるおか りんいち)は華道家元の跡取り息子で、中高一貫の名門男子校に通う中学三年生だ。虚弱体質な彼は、よりによって高等部への進級判定がかかる期末考査試験の時期に高熱を出してしまった。

 凜一が寝込んでいる間に、祖母勝手に凜一の従姉 省子に、凜一の替え玉として期末考査の追試を受けるよう命じてしまう。

 回復後、凜一は省子から恩を着せられ、厄介事を押し付けられる。それは省子の服を着て彼女なりすまし美術館監視係を勤める、というもの。だがそれは罠だった。省子のボーイフレンド 氷川美術館まで会いに来たのだ。凜一を省子と勘違いしたまま、待ち合わせをすっぽかしたことを詰る氷川。凜一は人違いだと明かそうとするが、その時、氷川は思いもよらぬ行動に出て……。


増田感想

 ふぅ、そんなに長い小説ではないのだが、読了するのにかなり時間がかかったぁー。というのも、長野まゆみ作品四季折々の花鳥風月描写がただでさえ多いというのに、本作は主人公華道師匠であるために、やたらめったら沢山の花の名前が出てくるからだ。

 そういう物を全く気にせずに生きてきた私には、あれもこれも知らない花。一々調べることもないような……と思いつつも、全部読み飛ばそうとすると却って眠くなってしまうので、特に気になるものだけをググってみた。それでも一頁読む間に数回スマホを手に取る羽目になるくらいの、花の名地獄だったのだ。はぁー。その時は「なるほどこういう花なのね」と思うんだけど、まるで覚えられなかった……。幸か不幸か、長野まゆみ作品では花の名前は多く出ても花言葉には拘りがなさそうなので、花言葉調べ地獄にハマらずには済むのだけど、花言葉と関連づかないだけにむしろ記憶に残りづらいというのはある。

 『左近の桜』シリーズ茶道の話がよく出るけど、この凜一シリーズ華道なわけね……。私にはよく分からない世界だ。分からなさすぎて、どう想像したらいいものやら。

 なお、時代1976年の冬から1977年の夏! 私、生まれてない……! なおさら想像がし難い。時代微妙に近いだけ余計に。私の父がロン毛でパンタロン履いてたような時代だろうか。江戸時代とかよりイメージしづらい気がする。

 想像力の翼を折られそうになりながらも頑張って読んだ。ちょっと甘酸っぱい感じの耽美調のBLだった。なかなか距離感の縮まらない恋……。こういうのもたまにはいいな。

 最初の方は、凜一は病弱で可憐名前通りに凜としていて、他の長野まゆみ作品にはあまりいない感じのタイプ主人公かなと思ったら、ストーリーが進むにつれて、安定の例のメンタルがいやに太くて小賢しい性格だというのがわかった。期待を裏切らない! そしてやはり、そんなちょっとスレ性格の凜一を構う年長者たちは、やはり意地悪キャラばかりなのだった。長野先生定番だなぁ。

 凜一の叔父しかも凜一にとっては初めての男であるらしい千尋の意地悪具合がいい味を出している。『左近の桜』シリーズに登場する柾を幼くしたようなキャラだなあ。昔の恋人面影をいまだ追ってるところといい。

 凜一の想い人の氷川長野まゆみ作品登場人物とは思えないほどの健全スポーツマンタイプなために、すごく爽やかな恋愛模様だった。なんか、凜一シリーズ好きな人が『左近の桜』シリーズを嫌うの、ちょっとわかった。


こんな人におすすめ

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん