様々な酷評がネットを覆っているが、致命的だと感じた部分を何点か。
(多くの方が酷評してるキャラデザはアリだと思っている。キャラクターは社会や歴史を描くただの駒なのだ。それでも石黒版ではキャラ描写が秀逸で魅力的だったことは確か)
メカがCGになり、数万隻の艦隊を描く作画上のハードルはかなり下がったはずだと期待していた。実際に描かれたのは普通のSFにありがちな芯の感じられないデザインの戦艦が重厚感、巨大感をまったく見せずに軽快に動き回り、戦術の深淵を感じさせない異常なハイテンポの戦闘であった。雰囲気が軽薄すぎる。
数万隻がダイナミックに関わる作品上の見せ場のはずが艦隊の遠景描写も近景描写も全く石黒版に及ばない。
クラシック音楽による重厚なBGMも、耳に残らないありがちなものに置き換えられてしまった。虚空に伸びる無数のビームの描写も消え失せ、もはや苦痛でしかなかった。
根本的にスケール感、質量感、雰囲気を描くことに失敗している。そのうえでSFとしてよりリアル、あるいは盛り上げるにはどうするべきかという改善を試みた形跡がまったく無い。
②背景美術の軽薄さ
前述の戦闘の雰囲気にも通底した問題だが、社会、文明、文化、生活、どのような世界にキャラクターたちが生きていてどんな雰囲気が漂っているのか、セリフに出さずとも背景1枚で多くを語ることが出来る。石黒版はそのあたりも実に巧みで、数百年続いたゴールデンバウム王朝の頽廃や、戦争に疲弊し制度や社会が麻痺していく同盟を実によく描いていた。
残念ながら、新作では帝国、同盟ともに最近のアニメやSFにありがちなものとなってしまった。同盟側は比較的現代社会に近いので新作の方向性としてこうしますよ、というのであれば受け入れられなくもないが、帝国側の描写は悲惨そのもの。西洋建築や文化に詳しいスタッフがいなかったのか?というくらい軽薄な、なんちゃってヨーロッパとミスマッチなSF、安っぽい貴族趣味的豪華さが同居した地獄となっている。貴族的近世的な文化と高度な星間社会との落差を石黒版では見栄え上は完全に近代的文明を感じさせない方法で乗り切ったが、新作ではどっちつかずの半端な描写となっている。
③単純に尺が足りてない
これは多くの方が言及しているが削りに削って再構成した石黒版でさえアムリッツァまで15話かけている。新作は12話かけて直前まで到達。尺が足りない。全く足りない。足りてないのを何かで補うわけでもなく、必要な描写をばっさりカットしていき、①や②で述べたようにそもそもすべてが軽薄。もちろん①や②が改善されないまま15話かけても駄作扱いだっただろう。(多くのひとが言うように世間的な評価にはキャラデザも当然影響している。私はあまり気にしないだけである)
大事な順に書いたので、①さえまともなら、他がグダグダだったとしても楽しんでみていたと思う。せっかくCGでいくらでも艦隊戦出来るのに活かせてないのは本当にツライ。そういう意味ではガンダムジオリジンはかなりうまくやっていると思う。艦隊戦やメカ描写に並々ならぬこだわりを注いでいることがよく伝わってくるし、アニメ版のガンダムを良い方向でリメイクしている。(オリジンはオリジンのアニメ化であって厳密にはリメイクではないという意見ももちろん承知している)
>芯の感じられないデザイン あのデザイナーさん、そんなデザインばかり