2014-11-14

メガネと性行為がしたい

それまではメガネを掛けた女性が好きでたまらないと思っていました。それが、本当はそうではないということに気付いてしまったんです。

自分の中で美人だったり可愛いという基準メガネがなくては絶対に成り立ちません。その日だって、いつも通りメガネを掛けた女性に見とれていました。

午後の外回りが落ち着いた頃に、休憩で立ち寄った喫茶店で通路を挟んだ斜め向かいの席にその女性は座っていました。仕事がうまく行かなかったのかそれともこれから大事ミーティングがあるのかわかりませんが、今どき紙の書類を束にして、そこへ気難しそうに視線を落としていました。

黒くしっかりとしたツヤのある縁どりに、やや四角い横長ながらそれほど大きさを感じさせないメガネから、薄めの化粧の割にアイラインがしっかりと描かれた、意志の強さを感じさせる瞳が覗いていました。

余計なものは身につけず、身体のラインが感じられるグレーのパンツスーツに上着から清潔感代名詞のような白いワイシャツが顔をのぞかせ、少し長めの黒くまっすぐな髪を掻き上げるその仕草に、一瞬で釘付けになってしまったのです。

正直にお話しすると、この年になって恥ずかしながらその瞬間自らの情欲の塊に熱を帯びた血液が流れこむことを感じました。取引先でも飛び込んだ先でも恥ずかしくないようにいつでもしっかりとアイロンをかけたスーツと一緒に社会性なんぞを着込んでいたつもりでしたのに、そんなものなどもとより持ち合わせていなかったのだと気付かされてしまうほどに身体が紅潮していくことがわかりました。

から溢れ出る支配的な衝動とそれでもわずかばかりに残る羞恥心とで文字通り身動きを取ることが出来ず、女性に気付かれないように視線を送り続けることが精一杯でした。

いつ運ばれたのかも分からないコーヒーから湯気が消えかけた頃、少し疲れたのでしょうか長い時間書類と睨み合っていたその女性が不意にメガネを外してしまったその時のことです。それまでこれほどまでに自らを縛っていた情欲と衝動が、まるで掃除機に吸い込まれていく電源コードかのように瞬く間にどこかへと消え失せてしまったのです。

もちろんのことながら、今までもメガネを外した途端に興味がなくなってしまことなんてのは、じつにざらでございました。ところが、今回に限ってはそんな程度のことでは到底説明のできないほどの浮き沈みがあったのです。風一つ無い穏やかな草原前触れもなく竜巻が表れ、触れるもの全てを容赦なく巻き上げたかと思うと、ふとした拍子にすっかりとなくなり、その代わりに巻き上げられた理性や情欲が一気に地面にたたきつけられたかのような気分でした。

そうして再び女性が顔を上げた時には、そこには確かに美人ではありながら実に面白みのない、むしろ今時に少し媚びているような女性が座っているだけにしか見えなくなっていました。

相手も気付いていたであろうそんな視線を送り続けていたことが失礼であるのか、それともその相手がメガネを外した途端に落胆とともに席を立つことが失礼であるのか、そんなことを考えつつもその場で店をあとにしました。この時の手を付けなかったコーヒー代が高かったのか安かったのかは未だにわかりませんが、自分がひどく狼狽していることだけは理解していました。

果たしてそれから会社に戻るまでに、数人の心惹かれるメガネ女性を見かけることができました。初々しい学生服に身を包んだ知的さを感じさせる少女。年の割に細身で凛とした姿勢に品のある衣服をまとう子育てから手を離しつつあるであろう齢の淑女。先ほどと同じくスーツを着こみつつもぎこちなさとあどけなさを失いつつある乙女。今までどおり誰もが魅力的であるにもかかわらず、先ほどまでとは違い心の片隅からじんわりと滲み出るような不安が語りかけてくるようになったのです。

”相手がメガネをかけていなくても、本当にそう思えるのかい?”

メガネを外し衣服さえも身につけない姿を想像して、それでもその溢れ出る情欲が続くものと思えるのかい?”

残念ながら到底そんなふうには思えない自分がそこにはおりました。もし先ほど魅力的と感じた女性たちが一糸まとわぬ姿で目の前に立っていたとして、メガネもつけないままでは一切の感情が沸き上がってくるとは思えない事実に気が付いてしまいました。

ああ神よ、しかしそれは同時に大いなる発見ももたらしてくれたのです。

今まで魅力的だと信じていたのはメガネをかけている女性ではなかったということを。

常々興奮を禁じ得なかったのは、女性ではなくそ女性にかけられているメガネなのだということを。

数少ないながらも男女の行為に及んだ際にはメガネをはずさないでほしいと頼み込んだこともありますが、それでもどこか満たされない自分がおりましたのは、つまりそういうことだったのです。

もちろんメガネなどという物質のものに興奮をするような変質者ではございません。

わたくしが申し上げたいのは、女性にかけられているからこそはじめてメガネメガネという存在を越え、そのどちらをも超越した神秘的かつ魅力的な存在となり得るだということなのです。

さて、ここまでお読み頂いた奇特な方がどれほどおられるかわたくしにはわかりかねますが、ここでやっと本題である表題に戻ります

まりわたくしが申し上げたいこととは、いかにしてメガネと性行為が実現できるかということでございます

メガネをかけた女性行為に及んだところで、満足するのは女性のものしかありません。

わたくしが心から満足させたいと願うのは、女性にかけられているメガネなのでございます

いよいよ核心にたどり着くことができたにも関わらず、その手段を思いつくことが出来ず今日に至ってしまいました。

これほど聡明な方が多数集まるこの場をお借りして、なんとかこのちっぽけながらも切なる願いを叶えて頂ければ、何よりの幸いです。

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