■anond:20241003210356

今日は大雨だった。

それで、昔を思い出すことがあったので、少し書いてみることにした。

これは、俺がまだ大学生だった頃の話だ。その日は急に空模様が変わって、雨がどしゃ降りになった。

俺は傘を持っていたから問題なかったが、駅を出て少し歩いたところで向こうから歩いてくる男がいた。

そいつは傘を持っていなくて、大雨の中びしょ濡れになりながら歩いていた。俺は思わずそいつのもとに行き、自分の傘を差し出した。

なぜそんなことをしたのか自分でもよくわからない。俺は元々人見知りだし、見知らぬ人に話しかけるのは得意じゃない。だからあの時の行動は、無意識にやったものだと思う。大雨の中をずぶ濡れで歩いている人を見過ごせなかっただけ。それが正直なところだ。

そいつは驚いた様子で「え？」と俺を見つめてきた。俺も急に話しかけたから慌ててしまい、大雨の中を傘もささずに歩いていたことを言い訳にしたと思う。

少し話をすると、そいつの家はそう遠くないことがわかった。「家まで送るよ」と申し出ると、そいつは少し考えた後、お願いしてきた。二人で相合傘の状態で歩いていったが、俺は緊張していて、何を話したかほとんど覚えていない。とにかく、慣れていない状況に戸惑っていたんだ。

そいつの家に着くと、そこで別れ際に連絡先を交換した。

翌日のことだ。俺は本当に驚いたんだが、そいつから連絡が来て、「もしかして、◯◯大学の人？」と大学名を言われた。当たっていた。そいつも俺と同じ大学で、なんと一年先輩だった。それで「お礼に学食で昼飯をおごるよ」と誘われて、一緒に昼食を食べることになった。

昼食の時に色々話して、実はそいつ、俺のことを何度か見かけていたらしい。でも俺は全く気づいていなかったので、ちょっと傷ついたようだった。俺は焦って、学年が違うからだとか、取ってる講義が違うからだとか、色々と言い訳した。

そいつは冗談だよ、と笑ってくれた。その笑顔が男らしくて爽やかで、でもどこか親しみやすい感じがして、今でも印象に残っている。

それから自然と交流が始まって、お互いにはっきりと「付き合っている」と言ったわけではないが、友達以上の関係になっていった。

改めて思い返すと、そういえば告白なんてしていなかったなと思う。でも、一度だけしっかり告白したことがあるんだ。それは「一緒に住もう」と俺が言ったときだ。

そして今日、また大雨が降っていた。駅に向かって歩いていると、傘をささずに歩いているおじさんがいた。その人だけが雨に打たれていたから、俺は思わずその人を傘に入れてあげた。驚かれたけど、俺はテンパりながらまた説明して、それで一緒に駅まで歩いて行った。おじさんは気さくで、色々話してくれて、10分ほど楽しく会話しながら駅に着いた。

駅に着くと、おじさんは深々と頭を下げて、「感謝の気持ちだから」とデパ地下のお菓子を渡してくれた。申し訳ないので「いいですよ」と言ったが、「嬉しかったから、いいんだよ」と言ってくれた。

家に帰って、そのお菓子を彼氏に渡すと、「どうしたの？」と驚かれたので、今日の出来事を話した。すると彼氏は「10年前と変わってないね」と微笑んでくれて、胸がぎゅっとなった。

本当に嬉しかったので、ここに書いてみたんだ。

最後に少し偉そうかもしれないけど、ほんの少しの優しさが人を幸せにできるなら、その幸せは自分にもきっと返ってくるって思うんだ。それをもし共感してもらえたら、俺はとても嬉しい。

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