2023-03-10

名は体を表さな

風車」と言うと、脳内でパッと浮かぶ画はあのデカ羽根ブンブン回る装置

英語だと、windmill。これも同じ物が思い浮かぶ

字面をよく見ると、風車は「風で回転する装置」だから、まあ言葉とモノが直感的に結びつく。

でもウィンドミルは「風で動かす臼」、というのを表すのが言葉キモ。確かに、元々は穀物を挽く装置だっから、そこにフォーカスするのもおかしくない。

じゃあ、今よく見る発電のための風車ウィンドミルなのか?

臼ではないのだから、モノと言葉が一致するのはウィンド部分しか残らない。

他にも、ここ数十年で著しく成長した電子技術分野では特に「名残の表現」が数多く残る。

ビデオを巻き戻す」もうテープじゃないのに。

チャンネルを回す」ボタンは回さない。

こういう名残りは個人的に嫌いじゃない。でも、「言葉は変わるもの、変わってきたものなのだから、これからも適宜変えていきべきだ」という人には面倒な話なんだろうな。

あと、「新幹線」というと、パッと浮かぶのはあのシュッとした車体の快適な高速の列車

でも「新幹線」という名前の中に、特殊な車体に関する言及は一切ない。「新幹線」と聞いて恐らく真っ先に浮かぶ、速いだとか快適だとかちょっと高いだとかのアイデンティティは一切表されていない。在来線とは違うという、交通網としての特殊性だけ。

モノレール」が何か説明されろと言われて、「線路が一本の列車」という部分にフォーカスする人はあまり多くはないのではないかと思う。

パッと浮かぶイメージは、高架に吊られたり抱え込んだりして走るちょっとレアなアレ、といった所だろう。

ソシュール記号シニフィアン意味されるものシニフィエとの結び付きが恣意的だと言う。我々が外で履くアレを「靴」と表すのに必然性は無いが、しかし靴を入れるモノを「靴箱」と呼ぶのには必然性があると言える。足に履くものを「靴」と呼び、モノを入れる設備を「箱」と呼ぶ合意が既にあるから。「名が体を表す」例と言える。

ウィンドミル新幹線後者の類の言葉の筈なのに、しかし名が体を表さない。面白いですね。

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