小さい頃から、唐突にものすごく不安なような寂しいような嫌な気持ちに取り憑かれることが時折あった。
それは例えば家族旅行の最中や、友達に誕生日をお祝いされているときや、好きな人と抱き合っているときや、とにかくうんと幸せなはずの瞬間に突然やってくるものだった。
日常で感じる不安や寂しさとは明らかに異質の感情で、不安や寂しさ、罪悪感、虚しさ、焦り、悲しみ、孤独、嫉妬、その他全ての負の感情と少しの懐かしさを混ぜ合わせて水で薄めたような不思議な感覚だった。
とにかく猛烈に嫌な感じだ。その感じが30秒〜1分ほど続くので、その間はとにかくじっと耐える。そうすればふっと消えるのだった。
成長して、異性と関係を持つようになると、行為の最中にそれが訪れるようになった。いつもじゃないし来るタイミングもまちまちで、頻繁に来る時期もあれば、数ヶ月来ない時期もある。
他人に共感を得られそうな内容でもないので、ずっとなんなんだこれは…という気持ちでいた。別に生活に支障があるわけではないが、ものすごく不思議だ。
ところがある日、たまたまネットで同じような現象を味わっている人を発見した。インターネットすごい。もう何年も前の投稿で、「これはなんですか、同じような人いますか」と書かれてあった。その文章があまりに私のイメージする感覚と重なっていたので、あっこれは、この人が言ってる感覚は、絶対に私の感じているそれだ!と感激し、同時にとてもほっとした。
その後調べてみると、全く解明されていないしこの現象が共有できる人もかなり少ないけれど、いないわけではなく一定数はいるのだと言うことがわかった。彼らはみんなそれが何なのかわからず共感も得られず一人で混乱したり、あるいは慣れたりしていた。
本当に言葉で言い表せない感覚なので表現はばらばらだったが、それでもあなたの感覚とわたしの感覚の正体が同じであるということを確信できた。ある人はそれを「学校のプールの匂いをかいだときのような、ノスタルジックな感じ」と表現した。ある人は「とても大切なものが永遠に失われてしまった時の感情」と表現した。不思議とどちらもしっくりくる表現だった。
こんな特殊な私的感覚をこうも共有することができるものなんだなあと嬉しく思った。ここ半年くらいそれは訪れていない。でも今度それがきたら、じっと耐えながらそうそうこれこれ、と少しニヤリとできるかもしれない。
あっそ
哀れな増田よ、だからお前はモテないのです