10代の終わり頃からずっと他人と正面から向き合うのが苦手だった。
他人に対して何らかの責任を負いたくなくて、いわゆる正式な『彼女』は作れなかった。
もし作ったとしても、自分の気持ちが維持できなそうな気がしてならなかった。
そんな僕でも、中高校生の頃は、多くの人間がそうだったように、恋愛に憧れがあった。
しかし、好き(と当時は思っていた)な女性と付き合っても、付き合うまでが楽しくて付き合ってからは全く楽しくなかった。
付き合うまでは学校の話や趣味の話だけして仲良くなればよかったのに、付き合ってから彼女の悩みや愚痴に取合うのがとてもしんどかった。
今思っても大した悩みではない。でも、人の負の感情を受け止めるのが煩わしくて仕方なかったのだ。
サークルの飲み会の帰り、酔っ払いすぎた女の先輩を家まで送っていった時だ。
一人では足元がおぼつかない先輩を、たまたま帰る方向が同じだった僕が引き取った。
家につくと、先輩は「まだ飲みたいから一緒に飲もう」と言い出した。
それが18の若者にはとんでもなく色っぽく聞こえて、家に上がりこみ、冷蔵庫に入っていたチューハイを一緒に飲んだ。
そんな話をしているうち、だんだんと顔が近づき、キスをして、ベッドに倒れ込んだ。コンドームはベッドの下にあった。
次の日の朝、僕はすごく面倒くさいことになったと思った。
普通の女の子と付き合うのも嫌なのに、先輩の彼氏と揉めるようなことは絶対避けたかった。
しかし、先輩はあっけらかんと「しちゃったねー」とか言いながら、大学の授業に出かけていった。
先輩は彼氏と別れなかった、そして、次の飲み会終わりも僕と先輩はセックスをした。
そして僕はこの関係性の気楽さに感動していた。
幸い顔と稼ぎは悪くなかったようで、セックスの相手はあんまり不自由しなかった。
悩み事は聞かなくていいし、気の利いたプレゼントも要らないし、記念日も祝わない。
彼女たちは、僕が不義理を働いても帰るところがあって、それがとても楽だった。
と、そんな生活をしているうちに僕は30歳になろうとしている。
周りの友人たちはもちろん、僕とセックスしていた女の子たちも結婚し、子供もいる。
そしてそれを見て、少しゾッとするのだ。
彼氏に隠れて僕とセックスしていた女の子たちが、何事もなかったかのように子供との生活ぶりをSNSにあげている。
自業自得だな