説明しよう。「サイケデリック旅行」とは人間の内的世界すなわち夢・無意識世界に没入することで、その鮮やかで自由な世界を散歩することである。本稿では荒唐無稽、支離滅裂な内容が続くため、物好きにして、根気の強い人のみ読むべし。
さて、初めてのサイケデリック旅行は、高校一年の時である。それは忘れもしない冬休み、雪のしんしんと積りゆくクリスマスイブの日の出来事である。聖夜の前日ということもあって、私はくさくさと家に篭り、もののけ姫のdvdを観た後に、チャイコフスキーの「冬の日の幻想」を聞いていた。確か40分弱の曲で、高校生の私には長く、単調なものに感じられたが、20分ほど聞いていると、不思議なことが起こりはじめた。
まぶたの裏にあらゆる断片的なイメージがカラフルな原色となって浮き上がってくる。それも、有名な絵だったり、カードゲームのカードであったり、動物だったり内容はまちまちである。はじめは、歌川広重の「おおはしあたけの夕立」が浮かんできて、様々な色の斑点を伴いながら、暗闇の深淵へと消えていった。それから子供の時に集めていた遊戯王のカードが、回転しながら現れて、その次に物置に仕舞った、白色のPSPが浮かんできた。さらにその次に現れたのは、なんと説明しようか、いわば極度に抽象化された、概念的なイルカだった。そのイルカは点と線のみで構成されるアルゴリズムのようであり、イルカショーで見られるような美しく大胆な、水から跳ね上がる運動を延々と描いていた。
https://www.fujibi.or.jp/our-collection/profile-of-works.html?work_id=1173
これは衝撃的な体験だった。それから私は無意識・夢の鮮やかで摩訶不思議な世界の虜となり、夢日記をつけ、河合隼雄の心理学を読み耽るようになった。夜、世界は青い静寂に包まれる。私は目を閉じて呼吸を穏やかにし、これからに映る美しい幻覚を心待ちにした。夢の中では空を泳いで、知らない街を見下ろしたり、通っていた高校に行って、やれやれ、なんて高校生らしい願望だろうか、ありとあらゆる同級生のおっぱいを揉みしだいたり、セックスをしたりした。
シンクロエナジャイザーっていう装置が昔あったな