私は夢見りあむが憎かった。
弓道袴を着て天然発言をぶちかましてくれるそんな一幕を、耳を澄まして聴く日が来る事を信じて彼女を推してきた。
だからこそ、夢見りあむが憎かった。
たとえバズが原因であろうと、ガチャブが原因であろうと、
その後のアイドルのキャラが更に鮮やかになり、広がっていくナラティブブーストとでも言うべき効果がある。
自分の推しではないアイドルが選ばれても、それはそれでデレマスの世界に新しい色が付き、世界は少しずつ面白くなり、広がる。
私はそれもまた、楽しみにしている。
だからこそ、夢見りあむが憎かった。
アイドルの世界が広がるのは、何もそのアイドルの姿形のお陰だけではない。
声のなかった時代に生まれた公式のキャラカードセリフ、ぷちデレラセリフ、イベントで生まれたユニットや掛け合い、劇場の描写などの公式による掘り下げ、
故に、声が付くというのはゴールではないと思う。
無論、声が付かなければ駄目かというとそういう訳でもなく。
私は声が付くというのはポケモンの進化のように考えているのだ。
ヒトカゲがリザードになった、でもガルーラは進化しないのにリザードより強いかもしれない。
コイキングがギャラドスになって存在感が一気に増したかも知れない。
そんなふうに、アイドル一人一人にそれぞれの成長と進化のタイミングがあるのかも知れない。
だから、私は水野翠に、もっと大きな存在へと進化して欲しかった。
そして、私は夢見りあむのその姿を見た。
彼女は。
夢見りあむは、あまりに薄かった。
まるで、レベル15ぐらいで捕まえ、厳選も努力値振りもせずにその場で石を使って進化させたポケモンの如く。
彼女には、声がついて振りまけるであろう『それまでに掘り下げた自身の色彩』があまりに薄っぺらすぎた。
私は夢見りあむを憎めなくなった。
むしろ、水野翠が登場後、このような担ぎ上げられ方をされなかった事に、安堵してしまった自分がいたのだ。
彼女はどうなるのか。
進化で図鑑を埋めた後は秘伝要員、もしくは殿堂入りまで要員として役目を果たすのか。