昔、何年か前に私は家族と某男性アイドルグループのコンサートに行った。
私はそのアイドルの大ファンで、今までに何度かコンサートに行っている。
私たちファンがコンサートやライブに行く目的は、どんなアーティストだろうとおそらく共通して
『好きなアーティストを直に見て、生歌を聴き、そこでしか味わえない楽しさ』を感じることだと思う。
きっとそれは相手がアイドルだろうが、バンドだろうが、ソロで活動している歌手だろうが、変わらないことではないだろうか。
前置きはさておき、私が行ったコンサートでは席があらかじめチケットに書いてある、席移動不可の会場だった。
アイドルが出てくるまでのドキドキ感、何が起こるのかわからない、あの時間は本当に他では味わえないものだ。
ファンはいつだってコンサートを、ライブを、全力で楽しむ準備をしてから会場に向かっている。
そしてついにアイドルが会場に出て、大きな歓声の中歌いだした。
私はもちろん興奮しながら大きな声で彼らを呼んだ。
周りも黄色い声をあげて彼らの登場を喜んだ。
会場はどんどん盛り上がり、曲に合わせてペンライトを振り、定番のコール&レスポンスをして楽しみだす。
でも、私の耳には大好きなアイドルの声以外に耳につくものがあった。
後ろの席の人が歌っていた。
これは、他のアーティストでもそうなのかはわからないけれど、少なくとも私が今まで行ったコンサートやライブでは、アーティストが歌っている間自分たちが歌うのはマナー違反だ。
当然、最初にも書いたがファンは『好きなアーティストの生歌』を聞きに来ているわけで、他のファンが歌う声なんて雑音でしかない。
(もちろんアーティストが『みんなも歌って!』と言ってマイクを向けるときなんかは別だけれど)
個人的には耐えられないことだった。
私はアイドルの歌が聞きたくてここまで来たのに、なぜお前の歌を聞かなければならないのだ。
気にしなければいいだろうと思うかもしれない。
音楽の方が音が大きいんだから、そんなに耳に入らないだろうと思うかもしれない。
これは体験した人ならわかるかもしれないが、どんなに大きい音で音楽がなっていても、すぐ後ろにいる人の声が意外と耳に入ってくるものだ。
ここでタイトルの回収になるが、恐らく後ろの席の人は障がい者だったと思う。
歌っている声の出し方というか、しゃべり方というか、なんとなく(あぁ、普通に話せる人ではないだろうな)と思った。
通常周りで歌っている人がいたら注意するだろう。持ち込み禁止のものを持っていたら注意するだろう。
マナー違反はファン同士が注意し合って改善し、アーティストや他のファンの迷惑にならないようするものだ。
でも、私たちは注意できなかった。
私だけではなく、後ろの席で歌っている人の周りは誰も注意できなかった。
彼はずっと歌い続けた。おそらく自分が歌える曲は全部歌っていた。
私たちは何も言えなかった。
ずっと彼の歌声が私の耳に入り続けた。
決して上手くはない、しっかりと発音できないあの声を聞き続けた。
今思うと注意するべきだったのだろうか。おそらく彼の横にいたのは彼の保護者で、その人に向かって「歌うのをやめさせてください」と言うべきだったのだろうか。
誰かが注意してそれを理解し、歌うのをやめられる人だったんだろうか。
彼が障がい者だったから、私たちは(なら仕方ないか)と思って我慢した。
それは本当に仕方ないことだったんだろうか。
多分いろいろな意見があると思う。
どれが正解だなんてないのだと思う。
でも、私はあのコンサートを全力で楽しめたのかと問われれば、言葉に詰まってしまうかもしれない。
帰り際、一緒に隣で見ていた母親に「後ろの人、障がい持ってる人だったね」と言われた。
私は「そうだね」と返すことしかできなかった。
相手がちょっとでも自分より強くて口げんかですら負けるかもと思ったら勝負しないのが人間の現実で それが障碍者に対する差別を防ぐ抑止力 障碍者にとって元気な介助者は自衛隊みた...
今回の件でいえば、障害者うんぬんというよりは、コンサート中歌う人は意外と多いですよ。 今まで、経験しなかったのは、とても恵まれていると思います。 私も、客の歌は聞きたくな...