2016-06-14

[]14:増田細胞

 増田家(五)は元は異なる名字の家であった。

しかし、二代目のとき増田平野部をむかし支配していた家にあやかって名字増田に変えた。

そのことから増田家とも言われる。

 そんな後増田家の城に増田家(八)の忍者が潜入工作をしていた。

いつぞやのセルクマたちである

 後増田家の城は配置に縦深があり、相互支援がおこなえる。

土で出来ていても、石垣に囲まれ増田家(七)の城より手強い防壁かもしれなかった。

 しかし、忍びは余計なことを考えない。ただ任務を果たすのみである

「キィヤァーーッ!!」

「ぐぁばッ!!?

 奇妙な叫び声と一緒に、七枚の黄色い星形手裏剣が飛来しアナグマの毛皮に突き立った。

潜入者はグァバデトックスウォーターを垂れ流して事切れる

「ウェーイ?」

 仲間の悲劇に残る二人のセルクマ武器を身構えた。一度に七枚もの手裏剣を投げつけるとは派手な敵忍者だ。

『ウェーイ?』

 警戒の声をあげたセルクマに向かって、その言葉が書き込まれ黄色手裏剣が飛ぶ。そして、手裏剣回避する標的を追うようにカーブして突き刺さった。

忍法、山彦手裏剣

 M字の面をつけた忍びが印を切る。

 彼ら首領もっと規格外存在であった。

 生き残ったセルクマは気づく。それまで城の櫓と思っていたものが、見上げるような大男の微動だにしない影であったことに。

まさに増田島の巨人である。彼は目が合っても一言も発しなかった。

「ウェーイ!!」

 三十六計逃げるにしかず。命の危険を察知したセルクマは全力で身を翻した。

だが、障子堀を渡る際、その桟にしかけられたマキビシに足をとられ、堀の底に転落した。

「ウェェエエエエエイイイイイ!!」

 通常は空堀になっているはずのそこには熱湯が張られていた。熱湯に落ちた忍者は真っ赤にゆであがる。

「……」

 沈黙まもる首領の前で、セルクマ悲鳴は風の間に流れて消えていった。

 北での増田家(四)の圧勝を受けて、増田家同士の講和が成立したのは、しばらく後のこと。

一時的に戦力の空白地帯になった旧増田領(二)の取得を狙う後増田家は急いで講和同盟にまで発展させた。

 それは彼らとの講和に苦労した増田家(三)当主が知って激怒したくらいのスピード締結であった。

前回

http://anond.hatelabo.jp/20160613121912

次回

http://anond.hatelabo.jp/20160615052605

記事への反応 -
  •  敵に本拠地を囲まれた増田家(九)当主は三人の息子たちを前に起死回生の秘策を語らんと欲した。 彼は包囲軍から滷獲した戦闘用に調教された熊(武熊)を三頭、庭に準備させた。 ...

    •  北の増田家(一)が謀略によってあっさり滅亡したことで増田家(四)は周囲から孤立した。  さいわい増田家(八)が増田家(五)との戦いに集中していることは、いろいろな情報...

      •  増田家(八)軍師、増田匿兵衛(かくべえ)は、増田大学に言った。 「旧増田領は敵にとって、間引きしそこねた柿の実のごとき場所。  いずれは熟さず落ちるのに栄養を送り続ける...

        •  ついに増田家(士)と増田家(九)の野戦軍は増原の野で対陣した。  まずは小手調べ。両軍の先鋒が刃を交える寸前、増田家(士)の武将が素っ頓狂な声をあげた。 「しばしまたれ...

          •  増田家(二)の人材は増田家(一)に降伏したため、仇敵の本拠地、増湊に人質を取られ働かされていた。旧増田領が占領されてからは特に肩身が狭い。  そんな増田一族の一人に「...

            • 「失礼します」  巫女装束の娘が増田家(四)新参家臣、増田典厩の部屋に入ってきた。  しずしずと洗濯物を運ぶ彼女は――突然、すっころんだ。 「あっ、も、もうしわけありませ...

              •  かつて十一を数えた増田家のうち、すでに四家が領土を喪失した。  明日は我が身に同じ苦難が降りかかることを恐れず、あるいはその恐怖から逃れるために 残る七家は自分以外の増...

              •  周囲に舐められまくっていた増田家(八)の大勝利は、増田島に激震を走らせた。  元々人口・文化が豊かだった上に、産業の優れた増田家(七)領を併合したことで、増田家の国力...

                •  このころ、みやこの河原には、こんな戯れ歌が流行した。 藁人形はカラスを追い払う。 カラスは雑魚ナメクジより強い。 ゆえに、藁人形は増田(八)兵よりなお強い。  これを...

                  • 自分の名前だけ出てないところを見ると、作者はお馬鹿さんなマヌケちゃんか。 わら人形論法なんて言ってる馬鹿はおまえくらいしかいない。

                  •  周辺諸国がそれぞれ領土を拡大する中、気がつけば増田家(三)は他家よりも増田らしく他人の足引っ張りに終止していた。  伸び悩む隣国を次の標的に定めたのは増田家(二)を併...

                    •  時はいま 星がしたたる 中世ニャッポン時代。創作では無視されがちな天災は忘れた頃にやってくる。  誰が不規則発言をしたのか、増田家(士)の本拠にもある日、赤い星が大量に...

                • お前のやってることは小鳥アジコと変わらん。ネタに可愛げがなくていじりをするときにディスが入っちゃってる。 カレーネタはなんだかんだでみんないじりながらもカレーさんを大き...

                • ブコメで自分が書いたとあっさりネタばらし なら増田でやるな自分の庭と取り巻きでやれ増田を汚すな増田を

  •  急いで増田家(八)との同盟を成立させた増田家(五)は、北の空白地帯の奪取に兵三千を送った。  浅ましい態度であるが、長い間平野部に逼塞を余儀なくされていた増田家にとっ...

    •  後増田氏と同盟を結んだ増田(八)軍は西から進撃してくる増田軍を迎撃するため、みやこの脇を流れる増江川に陣を張った。  敵味方あわせて十五万をこえる大戦のはじまりである...

      •  みやこの喪失により増田家(八)の勢力は大きく後退した。 地元が戦場となっただけに背走する軍隊からは大量の脱落者が生じる。 だが、その一方で増田家は致命的な一撃を敵にむけ...

        •  増田家(八)の領土は史上最大となり、そして史上最大の危機にあった。 増田家(士)との戦争で本貫地を荒らされ、一度は決戦に敗れ、極限までの動員を強いられた。 金食い虫であ...

          • 「どういうことぢゃ!?」  増田典厩はひさしぶりに実家に帰ってきた娘を詰問した。彼女はまず平伏した。  首尾良く増田家(八)内部に入り込んだ娘は増河の合戦時点では正確な情...

            •  最後まで主体性をたもって生き残った二つの増田家。 増田典厩の尽力により、その当主会談が旧増田領(六)で開催される運びとなった。  二人はそれぞれ供をひとりだけ連れて、竹...

              •  一年以上の準備期間を費やして増田連合軍は北方異民族追討の兵をあげた。 遠征軍には中心的な増田四家の当主がすべて参加し、統治の安定ぶりを誇示している。 会談では他家に強敵...

                • 「最後まで負け戦とは締まらぬ結果じゃ……」 「大事の前の小事にござりますぞ」 「うるさい、余は初陣であったのだぞ」 「はいはい」 「はいは一回にせぬか。だいたい左翼に比べて...

                  •  北方異民族を追い払ったことで増田島に泰平の世が訪れる。 共通の敵と戦ったことで各家にくすぶっていた敵愾心は冷却された。 それ以上に効果的だったのは増田家(八)が他の三家...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん