しかし、二代目のときに増田島平野部をむかし支配していた家にあやかって名字を増田に変えた。
そんな後増田家の城に増田家(八)の忍者が潜入工作をしていた。
土で出来ていても、石垣に囲まれた増田家(七)の城より手強い防壁かもしれなかった。
しかし、忍びは余計なことを考えない。ただ任務を果たすのみである。
「キィヤァーーッ!!」
「ぐぁばッ!!?」
奇妙な叫び声と一緒に、七枚の黄色い星形手裏剣が飛来しアナグマの毛皮に突き立った。
「ウェーイ?」
仲間の悲劇に残る二人のセルクマは武器を身構えた。一度に七枚もの手裏剣を投げつけるとは派手な敵忍者だ。
『ウェーイ?』
警戒の声をあげたセルクマに向かって、その言葉が書き込まれた黄色い手裏剣が飛ぶ。そして、手裏剣は回避する標的を追うようにカーブして突き刺さった。
M字の面をつけた忍びが印を切る。
生き残ったセルクマは気づく。それまで城の櫓と思っていたものが、見上げるような大男の微動だにしない影であったことに。
まさに増田島の巨人である。彼は目が合っても一言も発しなかった。
「ウェーイ!!」
三十六計逃げるにしかず。命の危険を察知したセルクマは全力で身を翻した。
だが、障子堀を渡る際、その桟にしかけられたマキビシに足をとられ、堀の底に転落した。
「ウェェエエエエエイイイイイ!!」
通常は空堀になっているはずのそこには熱湯が張られていた。熱湯に落ちた忍者は真っ赤にゆであがる。
「……」
沈黙をまもる首領の前で、セルクマの悲鳴は風の間に流れて消えていった。
北での増田家(四)の圧勝を受けて、増田家同士の講和が成立したのは、しばらく後のこと。
一時的に戦力の空白地帯になった旧増田領(二)の取得を狙う後増田家は急いで講和を同盟にまで発展させた。
それは彼らとの講和に苦労した増田家(三)当主が知って激怒したくらいのスピード締結であった。
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敵に本拠地を囲まれた増田家(九)当主は三人の息子たちを前に起死回生の秘策を語らんと欲した。 彼は包囲軍から滷獲した戦闘用に調教された熊(武熊)を三頭、庭に準備させた。 ...
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