共通の敵と戦ったことで各家にくすぶっていた敵愾心は冷却された。
それ以上に効果的だったのは増田家(八)が他の三家に送った軍目付の存在だ。
いざとなれば暗殺されるだけの存在にみえて、彼らには赴任先の軍を「まじめに訓練する権限」が与えられていた。
増田家(五)の強硬な反対を押し切って付与されたこの権限によって、各家の軍隊は雑魚ナメクジ化した。
戦争を起こそうとしても雑魚ナメクジ同士のにゅるにゅるしたナメクジ試合になると悟って、
次世代の当主たちは軍事面での野望を抱かなくなった。一方で海外から侵略者は増田家(八)の戦略を洗練させた戦い方で、にゅるにゅると迎撃される事になった。
最終的に増田島は以下の形に落ち着いた。
アルファマスダ家 | 当主 | 領国 | 石高 |
---|---|---|---|
増田家(八) | 大便公方 | (八)(六)半国(七)(九) | 560万石 |
増田島の統一に中心的な役割を果たした増田家(八)は、石高にして全体の半分近くを領する。
増田島の中央に位置するのをいいことに島中から名産品をかき集め、みやこの人間を飽食させる島最大の人肛を誇るうんこ生産国でもある。
旧増田領(九)に運河を建設して南と北の交流を活性化、平和の中でのさらなる発展を目指している。
当主の意向で公衆便所の整備が熱心に進められ、多数抱える人口密集地が衛生的なことは海外の商人にも感心されている。
増田匿兵衛は自分は戦争向きの人材だとして引退し、増田家(四)から預けられた増田四五郎などの育成にあたっている。
増田騎馬軍団は馬の機動力を活かして各地をむすぶ伝馬に新しい役目を発見した。
ベータマスダ家 | 当主 | 軍目付 | 領国 | 石高 |
---|---|---|---|---|
増田家(四) | 鎮寇将軍(鎮北将軍あらため) | 増田出羽守 | (四)(一)(二)北半国(三) | 290万石 |
増田家(四)は連合軍から制圧した旧増田領(一)を預けられる代わりに、(二)南半国を増田家(五)に、(六)半国を増田家(八)に割譲した。
ただし、海上の交易利権はより広く得ており、増田家(四)の廻船は大洋側でも盛んに活動している。
当主は北方異民族の来寇にそなえる意味で公式に鎮寇将軍の名をたまわった。
狄人には和戦両様で対応し、彼らとの交易や旧増田領(三)を中心とする金山銀山の開発で豪華絢爛な文化を興した。
金製の馬糞ウニ模型など「出来は素晴らしいけど、なんで作ったの?」と言われる日々である。
増田家(八)はこの芸術品への対抗に金の雲細工を作らせた。後の金のうんこである。
ガンママスダ家 | 当主 | 軍目付 | 領国 | 石高 |
---|---|---|---|---|
増田家(五) | 東上管領 | 増田金吾 | (五)(二)南半国(六)半国 | 290万石 |
まったく動かずに北と西から半国ずつ奪った増田家(五)は増田島全体の穀倉となった。
収穫期が訪れるたびに大量の穀物が北や西に送られ、ここでの穀物の出来が相場に大きな影響をあたえた。
穀物の形で西に流出する栄養素を補うため、漁業によって得た魚を肥料にする方法が開発された。
その魚の栄養は増田家(五)の穀物を食べた人々のうんこの形で海に流出し、潮に乗ったものであり、
ここに穀物とうんこと魚(とプランクトン)を媒体とした元素の循環が完成した。
また、受け入れたカラトラヴァ騎士団との交流が増田家(五)を海の果ての国々との取り次ぎ役にした。
彼らは居住を制限されながらも、布教と皮膚病を治す薬草の探査にあたっている。
緯度が異なる旧増田領(二)の半分を手に入れたことは増田家を気象変動に強くして、飢饉の防止に貢献した。
なお、石高は増田家(四)と互角ながら、鉱山や商業の収入では大差があり、文化的には他からゆっくりと遅れて行った。
デルタマスダ家 | 当主 | 軍目付 | 領国 | 石高 |
---|---|---|---|---|
増田家(十) | 西国大宰相 | 増田大学 | (十)(士) | 210万石 |
増田家(十)は他の増田家に比べて独立性が低く、増田家(八)からの干渉を強く受けている。
しかし、増田家(四)(五)の思惑もあって、第四の増田家として存在できている。
二位から四位の三家を足せば、石高では増田家(八)を上回るのである。
増田家(八)も西の外様大名を削るよりも、強い藩屏に育てる選択をした。
また、大陸との取り次ぎ役には歴史的に増田家(十)が適任であった。
歴代の当主は気性のあらい増田家(士)の武士を制御するのに苦労する。連中の雑魚ナメクジ化が増田大学最大の功績であろう。
その他
大名格の増田家 | 旗本格の増田家 | 商家になった増田家 | 消滅(吸収された)増田家 |
---|---|---|---|
(三)(九) | (二)(士) | (七) | (一)(六) |
役目を終えた忍者たちは、走狗として煮られない自衛のために、集まって一つの村を作った。
文化背景の異なる彼らを結びつける手段として、俳句が盛んに利用された。
俳句でなくても「決まりきった単語」を用いて100文字以内で伝えるのが作法であった。
より荒っぽい忍者はコミュニケーションに手裏剣を投げつけあった。
帰農した忍者が増えてからは野良仕事に使う手斧が活躍することもあったという。
また、村内の政治的対立を回避するためカラトラヴァ騎士団からもらった異国の犬が名目的な村長に推戴された。
村民は独身のおっさんばっかりだったので、将来性には乏しかった。
ひとつの戦乱の果てに増田家は以上のように整理されたが、勝ち残った増田家が次々と分家の増田家をつくったことは言うまでもない。世に増田の種は尽きまじ。
そじゃーな!
前回
「最後まで負け戦とは締まらぬ結果じゃ……」 「大事の前の小事にござりますぞ」 「うるさい、余は初陣であったのだぞ」 「はいはい」 「はいは一回にせぬか。だいたい左翼に比べて...
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