おもしろかった。
アンドロイドのソフト面を調律する職業という発想は珍しいし、主人公とアンドロイドの少女たちの関わりも見ていて楽しかった。
ただ、伏線や展開が機械的というか、頭で考えて書いたんだなということが伝わってきてしまって残念だった。
伏線の張り方は効果的だし、展開もきちんと山場や緩急があって読んでいて楽しかったが、そのほとんどに対して「ああ、この話はあとあと重要になってきそうだな」だとか「このエピソードはこういう効果を出すために入れたんだな」ということがはっきりとわかってしまい、なんというか……のめり込んで映画を見ている最中にNG集だとかオフショットだとかが挟まれたような、ちょっと冷めたような気分になってしまった。
そういう意味では、話の作り方やら伏線の張り方がうまいかというと下手くそであったと思う。
それからここからはこの作品自体の良し悪しではなくて編集さんや出版社に対しての話になるが、星海社が全力で肯定して新人賞から出した作品がこれだとしたら、「は?」という感じである。
もちろん冒頭に書いた通りこの本はおもしろかった。ど素人や発展途上の作家志望が書いた支離滅裂な話と比べたら桁違いのクオリティだった(というか、出版されているのだからその点は当然である)。しかし、それがあの、常に野心的な姿勢の星海社から、しかも新人賞から出されたと思うと微妙……とてつもなく微妙なのである。
正直これまで新人賞から出版されてきたものはどれも微妙だった。どれもこれも面白いが、「面白いだけ」。新人賞座談会での評価を読んだ際のワクワクを毎回裏切られている。普通に面白いだけの無難な作品。あまりにどれもこれもがそうなので、座談会での編集者たちの発言がビッグマウスすぎてハードルを上げてしまっているのでは……と可哀想にもなってくる。しかし、メフィストやファウストや講談社BOXで同じような発言がされていたときは確かに面白い作品と出会えていたのである。ハードルが上げられているせいだけではないのではないだろうか……。
このまま凡庸に面白いだけの作品を出していくのでは、星海社は完全に新人賞応募作品に指をさしてゲラゲラ笑う座談会を開くだけのクソみたいな出版社になっていってしまうのではないかと思う。頑張ってほしい。また、肉にまで刃が届くような面白い作品を送り出してほしい、絶対に。