前職はセールスの仕事でしょっちゅうクライアントから資料の提出を求められた。
それまで学校のレポートくらいしか作ったことがなく慣れない作成に夜遅くまでかかっていた俺に言った先輩からの一言。
先輩は資料作成が異様に早い人で、どうやってるんですか?とコツを尋ねたところ、似たような資料を自社のものも他社のものもガンガン使いまわしてた。
先輩曰く、いちいち確認が必要なことや自分で資料を集めないといけないようなことは書かずに知っていることだけでごまかしてしまえばあとからなんとかなるとのことだった。
実際口がうまい人だった。
営業やってると当然いい時期と悪い時期がある。
突然に契約を停止させられたり、成約直前にちゃぶ台返しをくらったりすることもある。
逆に社内の都合でお世話になってきた取引先をバッサリ切らないといけないこともあったりする。
上司の前では客先が理不尽な行いだけをしたように言い、取引先の前ではいかに自社の上司が愚かであるかということを言う。
自分が悪者にならないようにしていく話術こそが営業にとって一番必要なスキルだということ。
上司いわく「報連相をしろというのは、つまりいい話を自分に先に持ってこい」という意味なんだそうだ。
うちの会社では研究所と営業とを行き来することも多いのだけど、大量の研究費をつぎこんだ技術がなかなかいい結果を出さないと営業部の部長はかなり機嫌が悪くなる。
そんなときは上司に提出する資料をちょっと変えて、とりあえず出るはずの結果だけ報告しておけばあとから結果が出てからその通りにすればいいんだという。
どうせ研究の結果が出ても実際のセールスに乗せるまでは時間がかかるんだし、時間の短縮だと言っていた。
事実も結果もコミュニケーション能力でどんなふうにも使える。
人は口だけでここまで仕事の評価を挙げられるのだなととても感心した。
たぶん上司が社会人になった20年くらい前から、こういう人の方が社会的に高い評価を得てきたんだろうなと思えた。