「青年誌でやれえええ」的な、性的接触描写を回避しない漫画を少年誌で描いている漫画家が、「体面とか世間体を気にする必要がなければ、世の中の人は、みなエロや下ネタ大好きなのだろうと、ごく最近まで思っていた」的なことを言っていた、というような話を小耳に挟んだ。
というのは前フリ。
性的な表現が規制された近未来を描いた、とあるガガガ系のライトノベルがこの夏にアニメ化するので、マンガやアニメの宣伝にちょっとかかわる自分のところにも情報が回ってきた。それで想起したのだが、たしか出版当時、表現規制に絡めて「こういう作品が出せる世界こそ自由」「これが許さない人間こそファシスト」的なことを言っていた人がいたような記憶がある(出オチ的近未来ものといえば漢字が読めない妹とかもあったなあ)。
この作品で描かれている社会も極端だが、じゃあ、いま我々が身をおいているこの社会は極端ではないのだろうか、ということが頭に兆した。たしかに最近でも女性器をかたどったアートで逮捕される的なことはあるけど、性的な表現はわりあいフリーダムに思えるこの国の社会。
「18歳未満禁止」、「この作品には性的な表現が含まれます」といった、とりあえずの警告を「もちろんわかってますよ、皆こういうの大好きですもの。でも、体面とか世間体とかを気にするあなたは、ちょっと注意してくださいねえ」くらいの意味に思っているとしたら。
「わかってますよ、あなたがたの預言者を絵にしてはいけないんでしたね、でも、そんなタブーに何の意味もないんですけどね、周りの目もあるから怒ってるだけでしょう? まあ今のあなた方では難しいかもしれませんが、私たちが本当の自由を教えてあげますからね」
そんな感じに考えているとしたら。
あんがい我々も、大義名分を掲げ実力をつけた少数の性嫌悪者と、それに引きずられ、"体面とか世間体"を気にして"向こう側"についた多勢に焼き殺されることになるかもしれない(それとも、いざそのときになったら自由もなにもかなぐり捨てて"多勢"の方にもぐり込むのだろうか)。