痴漢をされたことがある。
初めて被害に遭ったのは18の頃。
集中して読んでいたところ太ももに人が当たってきた。
本屋なので邪魔だったのだろうと少し横にずれ、そのまま漫画を読み進めた。
するとまた太ももに当たってきた。
何度かずれる、当たられる、ずれる、当たられるを繰り返すうちに、もうずれるのも面倒になってそのまま漫画を読んでいた。
それにしてもなぜ何度も手がぶつかるのか。そういえば太ももだけである。なにかがおかしい。
一瞬頭によぎった。
しかし、当時の自分の服装というと短髪、Tシャツにカーゴパンツ、スニーカー。
小さい時から、男に間違われることが多かった。
スカートを履いていても「ぼくいくつ?」と言われることも幼稚園に入る前はザラだったほど。(母談)
中学高校時代は友人から「中性的な顔をしている」と言われていた。
服装も制服以外でスカートを履くことはなく、前述したようなTシャツとカーゴパンツやジーンズというようなもの。男物を買うこともあった。
公園の公衆トイレなどを利用すると入ってきたおばちゃんに「あら!?ここ女子トイレよね…?」と独り言を言われ外まで出て再確認されるくらいだった。
そんな容姿の自分が、まさか痴漢被害に遭うだなんて考えてもいなかった。
なにが起こっているのかわからずとりあえずそそくさと逃げた。
なんで被害に遭った側がこそこそ逃げなくちゃいけないのだろう、などと思いながら。
そのうちの一件は逃げる途中でカバンを掴まれたりされた。
そのどれも声を出したり店員に言うことはなかった。
本屋とは違い、揺れ動く車内。
太ももやお尻などを触られている、時には前を触られることもあった。
そのどれも本屋同様なにもせず、ただ逃げた。
つい最近、また被害に遭った。
それはいままでの満員電車と違い、乗客もまばらで全員が座っている車内だった。
座ったまま少し居眠りをしていた。
太もも横に人の手が当たったので横にずれた。
おじいちゃんやおばちゃんなどはわりとぶつかってくるからだ。
ずれたにも関わらずまだ手が当たる。
太ももと座席の隙間に手を入れられそうになっていた。
小さい子どもかもしれない、そう思い少し目を開けると隣には大人の影があった。
次の駅で電車を降りると、同時に加害者も席を立ち他の車両に移っていった。
その日に考えたことがある。
ポスターなどでよく見る、痴漢です!など声を上げられる人はなんて強いのだろう、と。
痴漢の手を掴んで、なんてことをよく聞くがそんなことできるわけがない。
痴漢に声などかけて相手の声を聞いてしまったらしばらく耳からその声が抜けない、そう考えるとこちらから何か言うのも嫌だ。
相手の手を掴むなどもってのほか。
そんなやつに触りたくもない。
性犯罪を減らす機会を潰しているのだろうな、次の被害者が出るのだろうな、と考えつつも結局なにもできず逃げるのはどれくらい罪に問われることなのだろう。
最近はそんなことを考えながら過ごしている。
なんで被害に遭った側がこそこそ逃げなくちゃいけないのだろう、などと思いながら。 後ろめたさみたいなものを感じているということでしょうか。 でも、たとえば相手が痴漢でなく...