■「遺書」としての刺青について

刺青＝身体を媒体にした情報記録

〇不可逆的。一度記録するとほぼ消せない。普段よりもより長期的な視野で記録する情報を選別しなければならない。より適切に。より美しく。

〇毎日目に入る。一日に一度は裸になり、シャワーを浴びる。情報を選別した記憶を思い起こす。

※ゾーニング。理由が何であれ現代日本社会の大部分にとっては忌むべきものである自覚を持つ。刺青を見せない。家族や勤務先など必要最小限の関係者には刺青があることを必ず伝える。必要な手続き以外は公にしない。

媒体としての身体

• 1.身体の神秘性
  • 身体は、遺伝子などの人種、民族、血族的な情報。父母の特徴。家族観。
  • 命と身体の不可分性、命の宿り木。また、自己と身体の不可分性。人格と主観の宿り木。

• 2.私と社会、内側と外側の出入り口
  • 日常生活の大半は、肌の大半が露出しない。衣服が私と社会の緩衝地帯、その下はプライベート。「本垢の自分」。
  • 日常生活の中で裸になるのは最もプライベートな時間、空間。多くはひとり、家、バスルーム、ベッド。自分との対話。「お祈りの時間」。
  • 外へ。身体的な変化を感じる。長いスパンからの自己統制。皺、ハリ、重ねた年齢。思考の変遷。現在の俯瞰。
  • 内へ。外的要因からくる感情の起伏や表現戦略の変化を顧みる。短いスパンからの自己統制。生活を見直し調整に繋ぐ。

時間を切り取る。自身を情報化する。

• 1.自己表現としてのデザイン
  • 施術者との共同作業。現地、現時点での私の感じ方、考え方、表し方。
  • 綴り：言語、フォント、異体字、紋章。
  • 内容：信念、誇り、権威、基準、目標、キーワード、比喩。
  • 時間：切っ掛け、区切り。
  • 変換：陳腐化、抽象化、結晶化。
• 2.死後に残る情報に仮託した自己拡散
  • 自身の哲学が遺る。現代の刺青は道具と技術の進歩によって表現の幅が広がり、様々なデザインを記録することができる。
  • 容易に保存、変換、拡散ができる。デジタルを介して、デザインによっては石でも、紙でも。干物はグロい。全世界に向けて発信したいわけではない。一次接触のみ。
  • デジタルタトゥーとしてネットに半永久的に遺る。アカウントの墓守をお願いしたい。

※特異な風習としての刺青

• 社会によっては無条件に受け入れられない場合もある。攻撃やかく乱の意図がないことを発表する。
• 特に、人格攻撃をする者の多い社会では、団体としての人格を傷つけられたという認知のゆがみがあるため、単なる情報記録であるという理解を得ることは難しい。例として、現代日本社会のほかに、身体神秘主義的な社会の保守的な部族、呪いや罪の証として、または迫害の根拠として刺青を利用している社会など。
• ここでいう「社会」とは、二人以上の意志ある者が利害の一部を共有する環境のこと。

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