#9観た。一期からの伏線である、田中あすかの瞳に世界はどう映ってるのか、彼女の本音は何なのかというところに一応の決着がつく回だった。手放しで絶賛するほどではないものの、けっこう興味深いところもあったので書く。
一言でいうと嘘つき。もうちょっと言うと過干渉を嫌い、それを笑顔とジョークによって躱す処世術は身につけたものの本音が外に漏れるぐらいまで一杯一杯になってる普通の女の子だった。
「あの人のこと嫌いってわけじゃないの」
(中略)
「嫌いじゃないって言いましたけど、嫌いなんですよね、お母さんのこと」
あすかと久美子のやり取り。嘘を即座に看破され、その後もっともらしい言い訳を述べるが、内心は母親をそうとう嫌悪しており、それを体のいい言葉で取り繕っている――ということは直前の香織とのやり取りを見ても明らかだ。
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この過干渉に対する露骨な嫌悪は、パターナリスティックな母親を想起してのものだろう。しかし香織が顔を上げるや笑顔になり、別れを見送りつつ「カワイイでしょ、香織って」と久美子に語りかける。直前の表情からすれば「ウザいでしょ、香織って」とでも言いそうなものなのにそう口にすることはない(みぞのぞの結末を目撃した我々は、一見すると仲の良い友人であってもそこに温度差があることはすでに承知しているはずだ)。
父親から贈られた曲を否定してほしいのかもと言いつつ、実際に思ってるのはその逆だ。ということは吹く前に「……本当に聴きたいと思ってる?」と不安げに確かめるところから察することができる。
そもそも久美子を家に呼んだのは、私利私欲に走った自分の苦しい胸の裡を誰かに話したかったからだ。そこからもあすかは特別なんかじゃなく、弱いところも持った普通の少女だということが判る。
むしろ特別なのはそんなあすかがハッとすることを折に触れて言う久美子のほうだ。
特別なあすかや麗奈に比べれば普通といっていい久美子は、しかし実際のところ作中における特異点だ。それは1期から麗奈によってしばしば語られてきており、今話でも強く指摘された。
「久美子ってなんか引っかかるの。普通のフリしてどっか見透かされてるような、気づいてなさそうで気づいてるような……」
「なにそれ……」
「そして、いちばん痛いときにポロッと言葉になって出てくる。……『本気で、全国行けると思ってたの?』」
「あれは……、あの時は……」
「だからなんか引っかかる。ギュッと捕まえてその皮はがしてやるって」
「あすか先輩も……?」
「判らないけど」
あすかにも府大会の直前に「今日が最後じゃないですよ。わたしたちは全国に行くんですから」と言って意味深な笑顔を浮かべさせたり、「嫌いじゃないって言いましたけど、嫌いなんですよね、お母さんのこと」とか「あすか先輩がいつもと違うんですよ」などと言ってハッとさせる。
これは久美子の失言王(http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%A4%B1%E8%A8%80%E7%8E%8B)というキャラと密接に結びついている。1期の開幕では「本気で、全国行けると思ってたの?」と言って麗奈に睨まれ、吹部の新歓を聴いては「ダメだこりゃ……」と零し葉月に聞き咎められる。いずれも“失言キャラ”というキャラ立ての一環であると同時に、本人の意図によらないところであっても本質を思わず突いてしまうという側面にもなっている。そしてそれは1期#8で結実し、今話においてより大きな伏線の回収という形を描いた。思わず「おおう」と唸るところだ。
「……本当に聴きたいと思ってる?」
「はい!」
「?」
「私、自分のことユーフォっぽくないってずっと思ってたんだ。だから黄前ちゃん見たときびっくりしたの。こんな……こんなにユーフォっぽい子がいるんだって」
「……褒めてます?」
ここであすかが吹いたのは父親から贈られたユーフォのソロ曲だ。ユーフォだけで構成された、独りで吹ける、あすかのためだけの曲。ただ本質的にユーフォはソロ向きの楽器ではないし、吹奏楽においてもペットのような花形にはなりえない。オーケストラにおけるチェロになぞらえられるように、オブリガードや伴奏などで曲に深みを与えるところで活躍する。ユーフォは集団の中でこそ輝ける楽器なのだ。
久美子は楽器を習い始めた当初からユーフォを吹奏楽の一部分として捉え、楽しんできた。集団の中にあることを疑わず、まっすぐ素直に受け容れてきた。
あすかにとってユーフォは父親と自分をつなぐ唯一の存在だ。みぞれにとってのオーボエのように大切な誰かとつながる唯一無二の手段。だから「私は遊びでやってるわけじゃない。独りで吹ければそれでいい」とさえ言う。そんなあすかにとって父親から贈られた曲は心の支えだったろう。だけどそれは同時に、父親に囚われているということでもある。あすかは母親だけじゃなく父親からも囚われている。そんなずっと独りで吹いてきたあすかが久美子に聴いてもらうために吹くということは、大げさな言い方をすれば初めて誰かに聴いてもらうために吹いたと言えるのかもしれない。
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卒業するとき、あすかは久美子に父親のノートを託す(2期#1冒頭)。それは父親が審査員を務める全国大会を経て完全にその呪縛から解き放たれたことを意味するのだろう。残る4話のうちにそこに至るまでのあれやこれやが画面いっぱいに描かれるはず。そう思うと終局に向けて動き出した『ユーフォ2』からますます目が離せない。
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わかるわかる ちゃんと原作生かせない薄い本は今の時代もう需要無いよね ユーフォなんてキャラ単体でセックスアピール強いわけでもないのに
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