2015-10-30

みじめさがつの

先日、学生時代の友人が上京したので晩御飯でも、となった。彼は県庁職員で独身、私は都内のしがないSI屋で公共系、それこそ彼の職場を客として、薄利多売を重ねる日日だ。毎日毎日作業予定なんてものはなく、ただ12時間働いても終わらないタスクけが積みあがっている。

そんな中、久しぶりなので振り切って定時に上がると彼と合流した。よく打ち合わせで訪れるその街での待ち合わせだった。当然だが彼はそこに用事があったのだ。ずいぶん久しぶりで、話し歩きながらもさて、どこで食べようかと物色する。

そこで私の中に黒い気持ち燃え上がった。彼は独身地方公務員実家暮らし。こっちは底辺SI屋で妻と子供マンションのローンを抱えている。めずらしくもない条件だ。私はこづかいせいで月18000円を支給されている。これで昼食、交通費、ほかいろいろすべてを賄わなければならない。なんとか考えて今日は3000円なら使っても耐えられるだろう、と目算をしていた。当然、それは彼の金銭感覚とは異なるだろうと自覚している。今だって店を探すのに彼はiPhoneをつかっている。私はもう6年物のガラケーだ。こういったちょっとした差がある。SI屋がどうしてスラックスワイシャツなのか理解に苦しむのだが、イトーヨーカドーでつるしのスラックスのわたしと彼とではそこから違うのだろう、とひがんでしまう心を止められなかった。

結局、話を上手く持って行って、はやりのイタリアンレストランへと入店した。もうこまかく描写するのも心がみじめになるだけだが、当然名がら注文内容はぜんぜん違った。結局割り勘だったので、4000円ほどだった。正直今日から厳しい暮らしだと、店を出て空を見上げてしまった。

すこし前に「ほとんどの人が趣味がないことにおどろく。なにをしてすごしているんだ」とツイッター話題になっていた。そういう彼らはその趣味に、どれほどの金をかけ、時間をそそぎ、1人で没頭できる状況にあるからできるのだと想像したのだろうか。大多数の、その趣味のない人は、金も時間も、1人になる状況も、手元にないのだ。だからテレビを見るしかないのだ。そのまとめと論調を見ながら、モニターにむかって叫びたかった。ふざけんな、ふざけんな、お前ら、ふざけんな、と。そりゃ結婚を選んだのも、子供を望んだのも、マンションを買ったのも、決めたのは俺だ。しかし、周り、両親から言葉にできない圧力をうけ、それから逃げるように上京した俺の気持ちがお前らに判るのか。なにが趣味がない人間がいることに驚くだ。ふざけんな。ふざけんな。うらやましい。うらやましい。だから黙ってその趣味に没頭してくれ。こっちをみるな、攻撃してくれるな。それだけで俺はみじめになるんだ。

今、俺が何をして時間を、仕事をしなくていい時間をつぶしているかと言えば、昔買ったままのPSPゲームを遊んでいるんだ。金なんてほとんどかからない。PSPなら家族からなにか頼まれてもすぐにやめられる。すばらしい。

ネットの連中が、自身ライフスタイルを誇示すればするほど、俺はみじめさを抱えて、丸くなる。独身の友人が、俺より稼いでいる友人が笑顔を見せると、心に黒い火がともり、みじめさを炙る。もうはやく死にたいのだが、家族がいればそれもできない。ただただみじめさを抱えて、なだめながら、テレビを見るしかないんだ。

みじめに。

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