はてなキーワード: 八木書店とは
「いいじゃないか」僕は言った。
だって嫁が友人を連れてくるなんて滅多に無い。
滅多に無いことを提案されると、嫁が僕への主観による決め付けを少し緩和させているような気がして嬉しくなる。
そうやって僕がうきうきしていると、続けてこう言った。
黄漢升が夏侯妙才を討ち破るという華々しいシーンを片手に、本棚を見ると、まず「ヤバい経済学」、「日本クレジット総論」という文字が眼に飛び込んできた。
次に「漫才入門 ウケる笑いの作り方、ぜんぶ教えます 元祖爆笑王」と「俳優の仕事」という背表紙を認識した。
なるほど。そういうことか。
嫁は友人に対して、僕をかっこよく話しているのかも知れない。それは夫として嬉しいことだ。
そんなかっこいい夫が、死ぬほど必死にお金を稼ぎだしてやろうと燃えている姿や、その為に笑いや演技を真剣に学ぼうとしている姿を友人たちに連想させてしまうのは彼女のプライドに触るのかも知れない。
僕のプライドをどこかで護ってくれている嫁に対して、僕は彼女のプライドを護る義務感が芽生えた。つまり、本棚でかまそうと決めたのだ。
まず、持ちうる限りの岩波文庫、講談社学術文庫、ちくま学芸文庫を並べた。リビングの本棚は小さいのですべて埋まった。
これは完全にかましている。素晴らしい。
そして、嫁に告げた。「ねえ、本棚を見てごらん?」
ふーむ。それならば趣味を少し加えてみよう。僕の場合、将棋と短歌がある。
将棋や短歌は需要が少ないので、名著と言われる本でもすぐに絶版になる。
絶版になった本は、定価千二百円ぐらいのものだが、神保町の八木書店やアカシヤ書店という若干お高い本屋で一万円以上出して買った事もある。嫁にはとても言えない大切な本だ。
本棚は五段に分かれているのだが、岩波文庫たちは下三段に押しやり、上二段を将棋と短歌で埋めた。
「うーん。そういうことじゃないんだよね。どうして分からないのかなあ」
なんだ。ぜんぜん分からない。
遊びをもっと入れた方が良いのか?
思い出せ、友だちの家の本棚を。
僕もマンガは好き。ああ、そう考えると結構気取ってたな。ああ、すみません。
でも、特攻の拓や、カイジや、三国志なんかは少し違うんだろうな。よく分からないけどきっと。
それならばと、一二段はSLAM DUNKとワンピースで、三四段目は将棋と短歌。五段目に岩波文庫と講談社学術文庫を並べてみた。
割と他人の家でまあまあ見かけるラインナップになってきた。
こんな感じで、結局正解が分からず、別の主観による決め付けが嫁の脳内に生まれてしまう結果となった。
本棚の見せ方について、言及しているひとを知っている方は教えて欲しい。