2023-01-26

エストレヤというバイクがあるんです。

250ccの、よくいえばレトロ、悪くいえば古くさいデザイン

不安定エンジン、驚異的な冷間始動の弱さ、錆びやすく、遅い。

バイクでいう『遅い』にもいろいろと意味があるが、およそ全ての意味で『遅い』ので、好きに遅さをイメージしてもらえると間違ってはいないと思う。

バイクには確か2006年を境にガソリン濃度を電子制御(FI)する機構が取り付けられているのだけれど、私の機体は2003年式なので勿論キャブである

FIとキャブの違いはとても大きくて、始動時に面倒が二手間ほどかかると思ってもらえば間違いない。

エンジンを掛けて、実際に走り出すまで五分とか十分を要するのだ。エンジンを掛けて、調子をうかがうのであるが、エストレヤが行けるという前に走り出そうとギアを入れるとエンジンは止まる。

自然エストレヤの機嫌をエンジンから推定するようになるが、わがままお姫様をあやすように根気強くやらねばならない。

そうして走り出しても、五キロとか十キロを走るまでは一時停止するとエンジンもしっかりと停止する安全設計

まれば、たとえそこがトラックガンガン行き来する細道であろうがバイクを降りてチョークを引いて再始動などが必要になるので停止するときエンジンが止まらないことを祈りながらブレーキを掛ける。

まり動き出し序盤は可能な限り、信号にも一時停止にも引っかからないルートを選ばねばならない。

目的地など、エストレヤの機嫌の前では関係ないのだ。

そうして走り出しても、エストレヤは冷風にとても弱い。

真冬に冷たい風が吹けばエストレヤは勝手エンジンを緩めて冬眠準備を始めるのだ。

割と暖かいトンネルから出た瞬間の横風が最もエストレヤによくない。

時速60キロで走っていたのに勝手に20キロまで急減速をかけてくれる。

これはエンジンを掛けて10キロ走っていようと100キロ走っていようと関係ないのだ。

まとめればあまり上等な機械ではない。

しかも、金属を多用した車体はとにかく磨かなければすぐに錆びるのだ。

しかし、これらは逆に乗っている間はずっとエストレヤの機嫌を考え続けることになる。

もっと慣れると、降りたあともエストレヤのことを考えることになる。

そうこうしていくうちに不思議と情が沸くのである

おそらく、もっとちゃんとしたバイクに乗り換えることはこの先もあるだろう。エストレヤより速くて快適なバイクが世の中にはいくらでもある。

だけど『エストレヤといた思い出』というのは多分、ずっと付きまとうんだと思う。中高生の頃の恋愛の思い出のように。

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