トータルでは自慢話だと思ってもらっていい。
俺は割り合いモテる。
世間の平均がよくわからないが、10代後半から30半ばの現在まで、だいたい年に一回くらいは女性から告白されるので、まあモテる方だと思う。とりあえず、これが客観的な前提としてある。
好意を持たれると、そのことが感覚的になんとなくわかる。二人で話しているときの雰囲気とか、職場で俺が近くに行ったときの反応とか、飲み会のあとで送られてくるLINEとか、なんとなくそうなのかな、と思わせることがある。
半分客観的と言えるのはその後に実際告白されることがあるからで、半分主観なのはされない場合もあるからである。後者の場合は俺の勘違いも含むんだろう。
あと、「え、全然そんな素振りなかったよな?」という相手から告白されたことは一度もない。基本的に、好意は言葉にする前から相手に伝わっているものなんだろう。
俺もきっと伝わっている(いた)んだろうな、と思うと、けっこう恥ずかしい。俺は高校のときから同級生の女性のことが二十年近くずっと好きでいる。いまでも仲はそれなりにいいが、向こうから恋愛感情を向けられたことはない。上に書いたような理由で、それはなんとなくわかる。
ここからが問題なのだが、好意というか秋波というか、決まった恋人のいるはずの女性からこれが来て驚くことがある。
実際にそういう女性から告白されたこともあって、本来の相手は…と思う。告白の前にケリを付けてきたのか、俺の返事が良くなければ元のところに戻る想定なのか…。
というか、表題の『かけたりするものだろうか』という問いは実際に告白された経験があるのだからすでに答えが出ているのだが、どうも納得がいかない。
男性の貞操なんていうのはかなりいい加減であることを周囲の連中から深く理解しているので、チャンスがあれば、据え膳食わぬはなんとか(古い)的な行動が多いのはわかるが、女性の場合も同じ、というのが腑に落ちないのだ。
だいぶ昔に『げんしけん』を読んでいて班目が彼氏持ちの女性に迫られて「女こええ」という場面があり、そうか、女はこええのか、と思った。
しかし、どこまで行っても知識の域を出ないというか、自分自身がそういう体験をしても、まだ「ステディな恋人がいる女性でも別の男にモーションをかけたりするものだろうか」と、どうも得心のいかないところがある。