母は、離婚してから父の話をしないか、しても悪口しか言わないし、挙句「あなたたちはあの人の子どもだから、あんな風にならないように気をつけなきゃだめ」とまで言っていた。
その後、精神科への通院を経て落ち着いてからは、父のことを私たち子どもの前で悪く言うことはなくなり、逆に私の成績を見て「さすが医者(父)の子ども」と言ったり「医者としてはとても優秀だった」と父を褒めるようにもなったし、
母の実両親である祖父母が私の前で父の悪口を言ったときにはそれを止めて、裏で注意もするようになった。
傍から見れば、「いくら精神的に病んでいても、実父の悪口を子どもの前で言うのは毒親」と思われるかもしれないが、私は母は母なりに頑張っていたと思うし、毒親とは思わない。傷つかなかったとは言わないけど。
ところで、母が父の悪口しか言っていなかった頃に、どうしても純粋に疑問になって、「じゃあどうして結婚したの?」と聞いたことがある。
返ってきた答えは、「この人は私が傍にいてあげないとダメだと思ったから」。
当時は、母は元介護士で、離婚後も最初は介護の仕事をしていた(心身ともに限界状態だったので割とすぐに続けられなくなってしまったけど)ような人なので、まぁ、その延長に近いのかな、自分には理解できそうもないな、なんて思っていた。
時が経ち、私は教育従事者の端くれになり、学校教育、家庭教育、発達心理学などを(ほぼ独学で)学ぶうちに、「養育環境に恵まれない子どもの助けになりたい」「養育環境に恵まれなかった人を救えるようになりたい」と思うようになり、ふと気が付いた。
父は、おそらく発達障害かパーソナリティ障害があったが、医者になれたほどなので学習障害はなく、時代的にも環境的にも、誰にも気づかれなかったんだろうと思う。
今の私は、「そんな父のような人の助けになりたい」、と考えている。なんなら、時代をさかのぼって、父を、母を、私たち家族を救いたい。
この気持ちの延長で誰かと結婚したら、母の二の舞になってしまうんだろう。