物書きになりたいと思っていた。
と言っても将来の夢だとかそんな大げさなものじゃない。俺は今まで短編小説やエッセイの一つも書き上げたことがないし、それについて勉強したこともない。ただたまにこうしてネットの片隅に下らない文章をアップロードしているだけだ。何故物書きになりたかったのか、それは思春期の頃文学少年気取りだったからかもしれないし、テキストサイト世代だったからかもしれない。あるいは文章を書くことで何かに辿り着こうとしているのかもしれない。一つだけ確かなことは、こうして文章を書く時は大抵ひどく精神的に不安定な時だということだ。
こういう時に文章を書くと何だか落ち着ける気がする。経験上それは気がするだけであって何の効果も生まないのだけれど、それでも書いている間だけはそのことに集中できる。きっと生まれる時代が20年遅かったら、俺はとてつもなく恥ずかしいラブレターを量産していたことだろう。そういう意味では手紙という文化のすたれたこのネット社会に感謝しなくてはならない。
ここまで読んでくれた奇特な人がいれば、俺に物書きの才能がないことはわかると思う。それは俺もとっくに理解している。でも今でもたまにそういう人生があったらいいなと思うのだ。一人で都内の1LDKくらいの部屋に住み、適当な時間に起き、音楽を聞き、小説でも書いて、飽きたら酒を飲んで、気が向いたら女を抱く、そんな世間とはある種切り離された生活を送ることも、もし俺に才能があればできたかもしれない。
多分一種の逃避なのだろう。俺はひどく矮小で、つまらない人間で、つまらない生活を送っている。そう、つまらないのだ。つらくすらない。だから誰にでもできる書くという行為によって、自分が特別な存在になれる可能性を夢見ている。何も望まず、何者にもなれず、何も残せない俺の、最後の逃避なのだ。
マジでセックスに対するこだわりと酒に対するこだわりはわからない