2019-07-01

[] #75-4「M型インフルエンザー」

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そうして放課後

俺は足早に家に帰ると、すぐさま自分の部屋に向かった。

パソコンで“M”について調べるためだ。

「……ギリシャ文字?」

だけど目的情報が見つからない。

ひらがなカタカナアルファベットなど、色々と変えて検索してみたけどカスりもしなかった。

なんだよ、最近検索機能はすごいって話を聞くけど、全然そんなことないじゃないか

マイルメートル……いや、距離とかどうでもいいっての」

それどころか段々と脇道に逸れていき、求めていない知識ばかり増えていく。

「へえー、M表記ってこんなにたくさんあるんだなあ」

同時に、俺の中で“M”に対する興味も薄まっていくようだった。

なるほど、誰も足取りをつかめないわけだ。

正直、“M”がネットにいるのかすら怪しいと思えてくる。

「珍しいな、お前がパソコンで調べ物とは」

つの間にか兄貴が帰ってきていた。

俺はそれに気づかないほど熱中していたらしい。

「1024×1024……算数の予習か?」

「違うよ。“M”っていうインフルエンザのこと調べてるんだ」

我ながら意味不明なことを言っていたと思う。

インフルエンザって、そんな型があったのか? というか、それで何で算数計算……はーん、なるほどな」

それでもさすが兄弟というべきか、すぐに状況を察したようだった。

「代われ。こういうのを調べる時はコツがあるんだ」

兄貴パソコンを使い始めると、たちまち画面にそれらしい情報が並ぶ。

俺が1時間近くやっても出なかったのに、人が違えば1分もかからないのか。

「おおー、すげえ」

「いや、関連するキーワード複数検索しただけだぞ。パソコンの授業とかで習わなかったのか?」

トランプゲームしかやらねえもん。テスト宿題もないような科目を真面目にやる気しないし」

まあ、こういうことになるなら、ちゃん勉強すべきだったと思わなくもないけど。

「とりあえず、そうだな……騒ぎの発端になった、『Mの告白』とやらを読んでみるか」


『Mの告白』はざっくりといえば、こんな感じだ。

“M”は『ラボハテ』の関係者であることを自称し、社内での事情を色々と羅列している。

社内での人間関係仕事内容での様々な不満など。

とにかく『ラボハテ』には様々な問題がある、ということが伝わってくる内容だ。

「ええ~……ラボハテってこんなヤバい会社だったのか」

かに、これはニュースにもなるレベルだ。

俺は『Mの告白』の衝撃的な内容に困惑した。

「お前、マジで言ってんのか。こんな怪文書をよく鵜呑みにできるな」

そして兄貴は、そんな俺に対して困惑しているようだった。

「え? かいぶんしょ?」

「お前には説明する気も起きない。餅を食べない人間に、餅が危険食べ物だと分からせるために原材料から解説するようなものだ」

「はあ?」

その日は結局、兄貴意味不明な例えをして“M”の話は終わりとなった。

ますます分からん。こんな内容で、何であそこまで騒ぎになってんだ」

「それは“インフルエンザ”だからじゃないの」

「……“インフルエンザ”じゃなくて、“インフルエンサー”な」

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