いつもゲームを一緒にやっている友人がいた。前の会社で同期入社した人だ。
同期とは言うものの、自分よりは結構年上の人だった。(大学の後に専門学校を経ての入社だったと聞いている。)
もう5, 6年ほど前になると思うが、あまりに給料が安いので会社を辞めようと思っている、と言う話を飲みの席ですると、同じことを思っていたのか、そもそも仕事が嫌になっていたのかは解らないけれど、「僕ももう辞めますよ!」と言って、最初に辞めるといってた自分よりも早く会社を辞めてしまった。
結局、自分はそのあと、2年くらいはその会社にいたのだけど、その間、友人は特に働きもせず、自分が東京の会社に転職した後もずっと無職のままだった。
特に家が近かったわけでもないので、前の会社を辞めてからは直接顔を合わせることはなくなってしまったのだけど、Skype だったり PS4 のパーティチャットだったりで、通話しながらゲームをするのは、ずっと続いていた。
そんな日々が続いていた先月のある日、毎日ログインしていたはずの友人がぱったりログインをしなくなってしまった。
仕事が忙しかったこともあって、ログインが途絶える直前くらいのチャットには参加しておらず、どのような状況だったかはわからないのだけど 、一緒にゲームをやっていた仲間からは「体調が悪いと言っていたから、入院したんじゃないか」という話を聞いた。自分も仲間もそのときは、まぁすぐに戻るんだろう、くらいに思っていた。しかし、最終ログイン日時が10日前となり、20日前となり、これはただ事じゃないかもと思っていた先月の終わりごろ、その友人から着信があった。
自分はその着信に気づくのが遅れてしまって、気づいてからすぐに掛けなおしたのだけど出なかったので、慌てて "大丈夫ですか?" とメッセージを送った。すると翌日に返信があった。
"生きていて安心しました。ちなみにいつごろに退院の予定ですか?" と返信すると、少し日を置いて、
全く目途立たず。
と送られてきた。
全く目途立たず、というのは少し引っかかったのだけど、まぁ、とりあえずは安心と思っていたら、今月の始めころにまた着信があった。
今度はすぐに電話に出れたのだけど、友人の声に妙に覇気がない。これは、と思っていたら「僕、どうもガンらしいんです。」と告げられた。
すごくショックだったのだけど、その時にはうまく飲み込めず、悲しいという感情はわいていなかった。
友人は、いつもの調子で「僕、退院したら○○に乗りますよ」だとか「もうフラグ立て放題ですね」とか、ふざけたことを言って、いつものように笑いあっていた。
話が終わり、友人は電話を切る前、いつもチャットを終えるときと同じように「お疲れ様です、ありがとうございました」と言った。その瞬間、あ、もうこのセリフを聴けるのは最後かもしれない、という不安が頭をよぎった。
電話を切って落ち着いてきたら、めちゃくちゃ泣けてきた。すぐに正直に "本気で泣くくらいショックです" というメッセージを送った。それから先週までは、まだ電話で連絡を取っていたのだけど、もう今週は電話もできていないし、メッセージも送っていない。
「○○の母親です」と返事がくることが想像できて、そんなことになったら恐ろしすぎるからだ。
最後の電話で、退院したら飲みに行きましょう、とか、入院中でももう少し落ち着いたら Skype でいつもの仲間と話しましょうと、という約束はしていたのだけど、このまま一生連絡は来ないのかもしれないと思っている。それは覚悟しているつもりだ。
しかし、もし、できるのであれば、自分が泣いていたことや、感情的なメッセージを送ったことを「まぁ、○○君は、こんなこと言ってますけど、僕が入院してた時こんなメッセージを送ってきましたからね」って言って、この先、何年でも生きてチャットのネタにして欲しい、してくれるならどんなに良いか、と毎日思って過ごしている。