大学に進学した直後なのに「大学教員になりたい」という学生がいて閉口している。
こんな学生が1人だったら、「意識の高い変わり者がいる」で終わるのだけど、なぜか複数いる。
新入生なんだけど、今まで大学や研究機関の何を見て、どういう考えに至って、大学教員になりたいと言ったのだろう。
まず教員になりたい、というのがわからない。大学の教育業務をやりたいということなのか?研究をするのではなく教育をしたいということか?まだ大学の授業も受けていないのに?
細かい話をすれば、うちの教員は全員研究科所属で、研究業績がなければ採用もされないし職階も上がれない(教育業績はあまり加味されなくなった)。才能があるのにテニュアが決まらないポスドク、教育に忙殺されてテニュアトラックに乗っても論文が書けない大学教員、精神を病んで論文もかけず研究費も獲得できない研究員を山のように見てきた。
そんな多くの屍の上に、大学教員のポジションがある。そんな覚悟も現状もおそらく知らない無垢な新入生達に、天真爛漫に「大学教員になりたい!」と言われたので、面食らっている。
なるな、とは言わない。
でも、なりたいうちは、絶対になれない。
大学教員はなるものではなく、「何かに対する探究心と熱量を人一倍持った人たち」のうち、運が味方した人たちなのだ。
そしてそんな人たちも、大学教育や学内政治に関心がなければ、リタイアしてしまう。大学教員が大学を運営できなくなって、立ち行かなくなった大学もある。
だから、大学教員になりたいとか、変なことを言う前に、自分の夢中になれる大好きなことをまず探してください。
そして、それが国が税金を払って進めたいもので、あなたがそれについて国内で最もよくわかっている人間だと認められたら、研究所の研究員や、大学教員になれると思います。いや、自然にそうなるのです。
大学の講義を受けたり、学びを進める上で、大学教育に問題があって自分がぜひ解決したいと思うようなら、大学教育を研究する大学教員になってください。
そうでないなら、民間に行った方が数倍は楽です。求めている人がいるなら、お金はもらえるはずです。
肩書きの聞こえの良さだけで、何者かになりたいというエゴで、どうか自分の人生を潰さないように。
ご入学おめでとう。