同人活動にハマったのは2008年だったから、足掛け9年ほど同人誌を描いている。
ジャンルはそこそこメジャーで読んでくれる人も多いので、幸いなことにモチベーションも切らさず本を書けている。
いろんな人の本を読んでは「なにくそ!」という気持ちで漫画を描いていた。
知り合った作家さんと新刊を交換し、互いの本を読みながら キャラの解釈について語るのが楽しかった。
本当に楽しかった。こんな楽しい営みがこの世にあるのかと思った。
イベントには申し込みを済ませていたので新刊を出さねばならない。
少ない時間からなんとか原稿する時間を捻出し、なんとか新刊を出した。
イベント後も仕事は変わらず忙しかった。こちらの趣味の事情など知る由もなく。
その時私は、同人誌を読むことを辞めた。
作家の熱い思いが16ページ程度の漫画にこれでもかというほど濃縮されていて、
一冊読み終えるごとにインターバルを挟まないと次の本が頭に入らない。
薄い本と揶揄されることも多いが、実際は見た目ほど薄くはない。
だから500円を躊躇なく支払える。
サークルにはささやかながらファンが付き、次の新刊を心待ちにしてくれる。
仕事とサークル活動と同人誌を読むことを天秤にかけ、「同人誌を読む」という趣味を諦めた。
積み同人誌とでも呼ぼうか。
当初は、時間に余裕ができればすぐに崩すつもりだった。
しかし、思い返せばその時すでに、サークル活動の面白さが同人誌を読む面白さを上回っていた。
そこそこ絵が描ける人はわかると思うが、
絵や漫画を描いて人に見せるというのは凄まじく承認欲求が満たされる。
幸い、こんな私でも絵も漫画も褒めてくれる人がけっこうたくさんいる。
時間的余裕ができたとき、私が真っ先にしたのは次の絵を描き、次のネームを切り始めることだった。
積み同人誌はまた増えた。
コミケに一度出るたびに、交換した新刊が段ボールいっぱいに満ちた。
そうして、積み同人誌のダンボールに囲まれながら私は生活している。
この生活を、この負債をどう返せばいいのかわからないまま、次の絵を描いている。
自分がいいと思ったものを表現して、良かったと返してもらえる。本当にやりがいを感じる。
一方で、同人誌を読むのを辞めてしまった私は、他の人にやりがいをお返しできないままでいる。
私はどうすればいいんだろうか。