2017-06-22

[] #28-2「超絶平等

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俺はその日寝坊してしまい、学校遅刻しそうだった。

少し焦ってはいたが、それでも急げばギリギリ間に合うレベルだし、何より俺には打算があった。

いつもの通学路を途中で切り替え、大通りのある方へと向かう。

喧騒が煩わしくて普段は避けているが、そこの交差点を利用すれば余裕で間に合うのだ。

だが、この判断逆効果だった。

ちょっとそこのあなた。止まりなさい」

呼び止めてきたのは市長だった。

どうやら政策の一環で外回りしていたらしい。

市民に対するアピールも多分にあるのだろう。

市長怪我でもしていたのか、杖をつきながらこちらに向かってくる。

しかし、なぜ呼び止められたのだろうか。

急いでいたとはいえ交通ルールは守っていたはずだが。

二足歩行で歩くなんて、何て差別的な!」

「え!?

まりにも予想外な言葉に俺は面食らう。

差別的』ってどういうことだ。

「杖や車椅子での移動を余儀なくされている、足が不自由な人もいるのですよ。だのに、あなたは公の場で何も考えず悠々と歩いている」

理屈がこれまた分からない。

どうしてそれで俺の行動が差別的ってことになるんだ。

「えーと、あの、市長さん?」

「そして、自分のしていることにまるで無頓着だ。よくない、ああ、これはよくない、よくありませんよ、よくない、よくない、全くもってよくないよ」

まずい、市長こちらの話を聞かない体勢だ。

「誤解してほしくないのですが、私は二足歩行自体否定しているわけではありません。ですが、それができない人間気持ちを少しは考えるべきです。足の不自由配慮して、“歩み寄り”ましょう」

このままでは遅刻する。

俺はテキトーに話を合わせて、この場を切り抜けることにした。

「はあ、一理ありますね。それで、俺はどうすれば?」

「これです、わたしのやっている通り。杖をつくなり、車椅子に乗るなりしなさい」

市長は杖を差し出してきた。

俺は引きつる顔をさとられないように手で覆い隠しつつ、もう片方の手でそれを受け取る。

「どうです。これで多少なりとも“理解”は深まることでしょう」

「そうですね」

「これからもそうやって移動するように」

恐る恐る杖をつきながら、市長から逃げ出すように歩き出す。

周りを見渡すと、他の人たちも似たような様子だった。

俺は市長のやっていることは理解に苦しむのだが、みんな何も言わないで従っている。

奇妙な光景だと感じるが、それは俺が差別主義者だからなのだろうか。

結局、学校遅刻した。

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記事への反応 -
  • その日、友人のウサクに誘われて、俺は何らかの会場に足を運んだ。 市長が何か大事な発表をするらしいので、見ておくべきだろうとのことだ。 「お集まりの皆さん、社会に生きる...

  • ≪ 前 「貴様が遅刻とは珍しいな」 俺はウサクにその時の出来事を話す。 「それは……あの市長もまた妙なことを」 「おかしくないか? 二足歩行で歩いただけで、足が不自由な人...

    • ≪ 前 俺たちのそんな鬱屈とした思いを、誰が真っ先に爆発させるか。 裸の王様に、裸だと伝える必要に迫られていた。 だがシガラミで雁字搦めになった大人に、そんな役目はあまり...

      • ≪ 前 挿入歌:「差別主義者の歌」 歌・作詞・作曲:ウサク その他 音が聞こえるか 差別主義者の音が 二足歩行のドラムが 響き合えば 足が不自由な人への 抑圧になるか 差...

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