そして、時に人は音楽というものに何を求めるか、それは何かであるかということで苦心する。
弟の友人であるミミセンは、そのあだ名の通り耳栓を愛用している。
大きい音や、雑音などが苦手だからだという。
その一環で、彼は家でもヘッドフォンをつけて音楽を聴くことも多かった。
それ自体は弟たちにとって慣れたものであったが、最近そこから漏れてくる謎の曲に不思議と引き付けられた。
「ミミセン、最近はその曲をよく聴いているよね」
「ああ、掃除をしていたら、物置にCDがあってさ。一昔前の曲だと思うんだけど、聴いてみたら中々いい感じの曲なんだ」
気になった弟たちは、その音楽をスピーカーから聞かせてもらう。
ミミセンの言うとおり、その曲はとてもキャッチーで、歌は思わず口ずさみたくなる小気味良さがあった。
「ユールネバー! ゲットイット! アウト、ヨア、ヘッド!」
シロクロが曲にノりながら、分かるような分からないようなことを言う。
恐らくだが、曲を褒めているのだろう。
「うん……いい音楽だね」
「クセになりそうだ」
だが弟たちには、一つの疑問が浮かんでいた。
「私もいい音楽だと思うけど、これ何て歌ってるの? どこの国の歌?」
その歌は弟たちの意味の分かる言語ではなく、少なくとも自分たちの国のものではなかった。
「それが分からないんだ。この音楽の入っているCDにも、ケースにも、タイトルや歌手すら書いてなくて」
最初はそれほど気にしていなかったが、ここまで謎が謎を呼ぶと逆にどんどん気になってくる。
「賛成。歌詞の意味が分かったほうが、よりこの曲が好きになれるだろうしね」
こうして弟たちは調査を始めるが、成果は芳しくなかった。
道行く人の答えは共通していた。
意外にも音楽自体は聴いたことがあるという人がほとんどだったが、その他のことは誰も分からないのである。
そこそこ期待していた魔法少女すら、答えは同じであった。
「なんで分からないんだよ」
「魔法少女でしょ」
「……」
魔法少女の肩に乗っている動物は、いつもならせわしなく動くのだが、今日は完全な置物のようだった。
どうやらペットを遠隔操作していた人が、席を外していたようだ。
「……本当、掘り下げれば掘り下げるほど夢も希望もない存在になっていくよね、この魔法少女」
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