2016-10-16

郷愁』という映画が神だった。

 何となしに選んだ、『郷愁』という1988年の映画。とんでもない神映画だった。

  

 京都から土佐の四万十という町に引っ越してきた一家の話。

 父親は働かない画家だが、女のパトロンおばさんがついたために楽な生活をする。家にはお金を入れない。

 母親父親の職として学校先生を言い出すも、「画家他人に雇われるなんてできるかよ!」と突っぱねる。

 一家収入は長女の稼ぎしだいである。長女は大学中退しているが、賢く美しい。最初電話交換手として働いているが、全然お金は稼げない。エリートなのに田舎に来ている理解者の英語教師の男と付き合いだすも、金がないため嫁には行かせられないと断る。

 さらに、その理解者のエリート教師も教え子を不注意から殺してしまい、罪の意識からダメ人間となり地元の人たちと同じ知的レベルまで落ちてしまう。

 長女は父が定職に就かないために、夜の仕事を始める。

 夜の仕事場に父が来る。パトロンも順調についていて楽しく過ごしているらしい、そんな父が見とがめて「こんな仕事やめろ!」

 しかし、長女は、どこまでも落ちてやるんだと、水商売先の客と寝て借金を肩代わりさせたり、どうしようもないバス運転手と付き合ったり。

  

 で、主人公は、こんな家の次男坊。口下手で、地元の人たちに流されるまま過ごしている。

 どうしようもなく崩れていく家族地元の土着的な性に対する汚い行い。

 どうしようもなさに流されて、自分意志でやることと言えば、金を得たら売春なり。誰もいない滝で叫んだり。

 どうしようもなさを理解するブス女とセックスしたり。

  

 まあだいたいそんな感じのストーリーものすごくいい映像でやる映画なんだけど。

 もう本当に、こうやって人間ってどうしようもなく落ちていくんだなあってのがわかる。

 人間存在の程度の低さとか、この世の嫌なところを書いている。しかも、それが『普通なんだよ』という説得力がある。

 こういう映画を見たかった。

 他人人生がムチャクチャになることへの憤りを感じさせてくれる、神映画だった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん