スペックとしては、子どもとおじいちゃんには比較的モテるが、同年代にはさっぱりモテない…というあたりでお察しください。
「お姉さん! 僕達もう出来上がっちゃってて〜、ダメな大人でごめんね☆ 今帰りなの?」
酒の席で知っている人が酔ってるのはいいんだけど、
こっちが素面で、知らない人がテンション高く近づいてくる、というのがシンプルに怖い。
なんか急に激高したりしないかなとか不安。
住宅街の21時台。
振り返ってみると、自転車でうねうね蛇行しながらついてくる、20代らしき男性。
試しに「結婚してますが」と言ったら去っていったので、普通の人だったのかもしれない。
でもやっぱ怖い。
これが自転車でなくて車でなかったらどうなるのか、とか。
自宅までついてこられないか、慎重に後ろを警戒しながら帰った。
主要路線でないので、その時間帯には1両に10人くらいしかいない。
音楽を聴きながらスマホを触っていると、なぜか目の前のつり革に両手でつかまる人物が。
やがてその人物は話し始めた。
「お姉さんキレイだね〜、一人なの? 今帰り?」
つり革にぶらぶらしながら、ひたすら似た内容を繰り返す。
こいつはヤバい。
もしもの時、車両内の乗客は助けてくれそうか、知らんぷりをしそうなタイプか。
どちらにしても、やや遠いのが難である。
途中駅で降りるか? だとしても追いかけられた場合、出たドアから駅舎までが遠い駅だったら、つかまってアウト。
通勤経路なので、頭のなかでいくつかの駅にマルバツをつける。
またこの手合は、無視することでキレるタイプと、反応することで調子に乗って手がつけられなくなるタイプがいる。
こいつはどちらか。
賭けだが、おそらく後者だろうとふんだ。
イヤホンをしているのをいいことに、存在に気づかない(絶対そんなわけないのだが)という設定とし、
すげー怖いけど、鉄の心でブラウザを繰る。
その間、奴はずっとぶらぶらしながら話し続けていた。
降りる駅まで15分。
長く感じられたが、事態はよくも悪くもならなかった。どうやら賭けには勝ったらしい。
次の乗換についてこられないよう、何度か迂回しながら目的のホームに降りた。
最後まで顔を見なかったが、それでよかったのだろう。
見たらトラウマになりそうなので。