虐待を発見するための一つの方法として、歯科検診がテレビで紹介されていた。。
そのニュースで歯科医はこんなことを言っていた、「口の中は生活の鏡」だと。
「歯磨き」がどんなものかは聞いてはいたが、歯ブラシを与えられることはなく、その重要性も全く教えられることはなかった。
小5の歯科検診で虫歯の通知をもらった。前歯の神経まで侵されていた。親は数回だけ、歯医者に連れて行ってくれた。
当時の私は知る由もなかったが、治療は終わっていなかった。
高校卒業まで、「治療中……ですか?」と何度か検診で言われた。
本当によくわからないので、「よくわかりません」と答えたし、そんなに重要な問題ではないと判断して歯医者にもいかなかった。
歯の治療なんか、炊事洗濯や勉強に比べたらよっぽど優先順位の低いことだった。
そして私は大学生になった。
わざわざ家から遠い大学を選び、念願叶ってゴミだらけの家を脱出することに成功した。
自分でお金も稼げるし、自分だけのために家事をすればいいし、いつでも友達と連絡をとれる。幸せだった。
しかし、そんな生活を送っていた20歳のとき、私は突然、前歯を失った。
晩御飯を食べていると、歯が折れたのだった。
翌日、朝一で歯医者に行った。
神経が抜いたまま放置されていて、おそらくこれは治療中だったことを説明された。
後悔するにはあまりに遅すぎた。
しばらく歯医者に通い、溜まりに溜まった虫歯を治し、最終的に2本の差し歯を手に入れた。
恥ずかしい話、私が歯磨きの習慣を身につけたのはそれからだ。