2014-07-29

女子高生の白いセーラー服も汗に濡れその若く活発な新陳代謝結晶である滴を夏風の中にキラキラとまき散らす七月下旬のいま私は女子高生猛暑のなか今日一日分の汗を存分に染みこませた裾をバタバタと揺らしてうっすら湿った双丘に新鮮な外気を送り込もうとする姿が見られるのではないかという期待のもとに午後六時頃に都心から郊外へと向うサラリーマンキャリアウーマンその他あらゆる暑苦しい面々を新幹線で売ってる押し寿司のような要領でぎゅうぎゅうと圧縮させた仄かに押し寿司香りさえ漂う列車に乗り込んだのであるが列の後ろのほうでぼんやり立っていたためホームの駅係員のたくましき腕によってメタボ中年の下腹に押しつけられた上に私の身体の押しつけられた部分が中年の服から染みだしてくるなにかによって水分の感触をおぼえ私は思わず声を上げかけたがそんなことで音を上げるようでは女子高生など夢のまた夢と思いなおし眼球をあたう限り上下左右に動かして周囲の状況を観察してみると車内の人間ほとんど成人のようであったからああ来る時間を間違えたかと気落ちしかけたそのとき右目の視界の端っこ眼鏡のツルに隠れて見にくい辺りにわずかに女子高生の姿がありしかもそれは私が待望していた白いセーラー服に黒光りする合皮の鞄をもった女子高生だったので私は欣喜雀躍し彼女のとこまで雀のごとく跳躍していこうかと思ったのだが常識的に考えて無理だったので鷹のごときつぶらな瞳でもって観察してみると吊革を握る女子高生の指はその何気ない動作においても柔らかであって腕は白くそしてその奥にある腋の下は一本の黒線が入ったカフスに遮られて見えないのであるが私が想像するに制汗デオドラントの鼻に抜ける香りの背後にカバーしきれない膨らみをもった濃厚な汗の香りが混じり合ったものであるだろうというのも彼女がたとえ部活のあとに自分の身体にスプレーをかけたとしてもその汗は今朝通学電車に駆け込んだとき腋の下の汗腺から滲みだしたものであって数時間ものあいセーラー服の中という狭く通気性の悪い空間の中で発酵したものであるから制汗スプレーのようなもので軽く糊塗したからといって消しきれるものではなく私の眼は五感の一つとしての視覚という枠組みを超えてその臭いをたしかに感じ取るのであったがそれにも増して注目すべきは通勤電車のなかで際立って輝く白いセーラー服のその生地の上にまで確かな存在感をもって浮かび上がってくる淡い緑色あれはたしかに下着の色であろうぞ少女わずかな動きに合わせてその緑色は細やかな陰影を生じその下にある膨らみの形状を間接的にしかしそれゆえ本質に迫った形で示すのであったがそれを見た私は触りたい吸いつきたいという強い衝動を感じたその瞬間私の押しつけられていたドアが突然開き私は大きな毬のようにころころと線路の上に転がり落ち危ないと車掌が絶叫したのも遅し早し上り電車が運悪く地を撼かしてやってきたのでたちまちその黒い大きい一塊物はあなやという間に三四間ずるずると引き摺られて紅い血が一線長くレールを染めた。

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