「奴隷の鎖」と呼ばれる太い鎖の左側の輪に男性の首が、右側の輪に女性の首が繋がれていた。
「俺は命がけで家族のためにやりたくもない仕事をして、家族を養うために金を稼いでいるんだ。お前なんか子供と家で寝ていればいいくせに。俺の方が大変なんだ」
と、首に輪を嵌めた左側の男性は、右側の女性に向かって叫んでいた。
「そうだそうだ。男は帰りたくても家に帰れない。嫌な上司や得意先に頭を下げて、くたくたに疲れて帰れば家でも子供の面倒を見ろと要求される。一体いつ休んだらいいんだ。子供を作らなくても人は生きて行けるが、金を稼ぐ人間がいなきゃ生きて行かれないくせに」
と、男性に味方するつもりで別の男性が彼を後ろから引っ張った。
鎖は男性達の方に引かれたが、輪っかを付けた男性の首がギリギリと絞まった。
「まったく最近の男は甘えてるな。大黒柱として一家を養うのが男の役目だというのに、嫁に働かせて恥じもしない甲斐性なしが泣き言を抜かす。女性が可哀想だ、私たちの頃は男子たるもの妻子に金の不自由など一切させなかったものだ」
「私は寝不足や肩身の狭さに耐えて子供を産んで育てているのよ、あなたなんか気持ちよく腰を振っただけで子供が手に入れられたくせに。私の方が大変なのよ」
と、首に輪を嵌めた右側の女性は、左側の男性に向かって叫んでいた。
「そうよそうよ。子供を産む人間がいなきゃ子孫を残せないくせに。子供がいれば自由もなくなるし、仕事だってこれまで通りには出来ない。仕事と違って母親には休みが無いのよ。お金なんか誰が稼いで来たって子供は育つけど、子供には育てる親が必要なのよ」
と、女性に味方するつもりで別の女性が彼を後ろから引っ張った。
鎖は女性達の方に引かれたが、輪っかを付けた女性の首がギリギリと絞まった。
「まったく最近の女は甘えてるわ。育児なんか誰でもやって来た女の仕事だというのに、他人に預けたり既製品を買って楽してばかり。男性が可哀想よ、私たちの頃は家事も育児もみんな女だけできちんとこなしていたのに」
あの男女の首はいつ飛ぶのかな、と思いながらそれを見ていた私は言った。
「子供を作るって恐ろしい事なんだね。そんなに辛いならやめてしまったらいいのに」
するとその一群から罵声が飛んで来た。
「日本を滅ぼすつもりか、非国民め。お前らみたいな人間は健康保険も年金も受け取るな、介護も受けるな。老後私たちの子供に世話になるくせに」
私を女だと思い込んだ人からも罵声が飛んで来た。
「産む機械のくせにそれを使いもしない欠陥品め。お前みたいな人間は存在価値がないんだ」
幸い私の首には奴隷の鎖が繋がっていなかったので、私はそのまま踵を返して彼らから離れた。
「自分で働いて稼いだ金を自分で好きなだけ使えて、休みに昼まで寝ていられるって幸せな事だったんだな。みすみすそれを手放すなんてあの人達はなんて愚かなんだろう」
私は安心してベッドに寝っころがり、帰り道に買って来たハンバーガーをかじってDVD鑑賞の続きに没頭した。
「会社に申請してしばらく時短を取ってもらえる事になったよ。これで俺もようやくこの子の面倒をちゃんと見られるようになったなあ」
「あんなに仕事が大変だったのに、これまでも助けてもらって充分有難かったわ。その証拠にこの子だってパパ大好きでこんなに懐いているじゃない」
「俺が仕事の間に君が頑張って子育てしてくれてたからだよ。そうだ、次の週末は臨時保育にお願いして、久しぶりに二人で食事でもしに行こうか」
「いつもみたいに親子で出かけるのも楽しいけど、たまにはそういう気分転換もいいかもね」
「私も本当に幸せよ。これから育つこの子にも、沢山幸せだと思える事があってほしいわ」
隣の家からそんな声が聞こえて来たような気がしたが、それが隣に住んでいる現実の夫婦の会話なのか、それとも自分の見た夢なのか、DVDを観ながらうつらうつらとしていた私にはもはやわからなかった。
日本において物事は「仕事」と「仕事以外」に分けられる。前者は価値があり、なにより尊く、後者は価値がない。仕事につながるあらゆることは価値があるとされ、仕事につながらな...
「奴隷の鎖」と呼ばれる太い鎖の左側の輪に男性の首が、右側の輪に女性の首が繋がれていた。 「俺は命がけで家族のためにやりたくもない仕事をして、家族を養うために金を稼いで...
「仕事はやりたくもないつまらないもの」という前提を置いてる時点で全く話にならない。
え、ええっ、「仕事はたのしいもの」と思ってるんですか、 「就職しなければならない」という意味での「仕事をしたい」ではなく、 「仕事が楽しいからもっと働きたい」という意味で...
仕事が楽しいと、治療受けなくちゃならんのか。 仕事が楽しくなくなるように、治療するのか。 嫌だな。
「仕事が楽しいからもっと働きたい」という意味での「仕事をしたい」と思っているんですか そうだよ。逆に言えば、つまらない仕事になったら辞めて転職するよ。 だから時短になっ...
すばらしい。
逆だと思う。 家に帰ると、子供より大切なものなんて無いでしょ!みたいな話になる。だから仕事と家庭のバランスを正しく判断できなくなる。 電車で子供が泣くと冷たい空気が流れ...
言ってることはわかるけど、「許されない」と思っているのはあなただけで、 育児を神聖化している他人の意見とかどうでもよくない?
仕事大変だからちょっと今日の夕ご飯は手を抜かせてー、とか大変な仕事があればそっちを優先していいんだよ、みたいな空気 ありまくりだろ何言ってんの別の次元にでも住んでるの...
価値がないというのは正しくない。 長期的には国の産業、経済を支えるために必要なことであり、価値がある。 問題は、短期的な価値が経済的にあまりなく、むしろ経済、時間、体力...
とはいいつつね 子供がいないうちから子供かわいいとか思えないし 子供がいたってかわいいと思えない親だっているわけで それを誰も責めたりできないってわけで まあ人を利用したり...
元増田が例示した ベビーカーをみて顔をしかめるし、子供が泣いていると舌打ちをする などの育児をしている人間をさげすむ言動を「人を踏みにじってるわけでもない」とするのは ...
http://anond.hatelabo.jp/20140327010039 仕事なんて育児をはじめとするプライベートな活動の手段だと思えば、 満員電車に入ってくるベビーカーを見て顔をしかめるバカもいなくなるんだろうな...
仕事しなきゃプライベートの生活もないだろ 親のすねかじるクソニートかよ
逆に聞きたいけど、お金にならないものには価値がないってどこの世界の話? そんなこと言ってるの東京の一部だけじゃないの?
江戸時代には、「間引き」って行為が平然と行われていてだね…
元増田もそうだが二項対立に持ってくのは知性が足りない
そうそうーそうなのよー(うなずく育児中主婦) まーでもいいよ、控除枠下がっても子供と食べていければ特に不満もなく幸せだし。 ただ一番やるせないのは共稼ぎ世帯に入った友...
主婦なんだろ?専業なんだろ?甘えるな。
巡回ご苦労様です(ビシッ